2019年4月1日月曜日

【駆け出しのころ】東急建設執行役員首都圏建築支店長・樋口稔洋氏

 ◇外に目を向け豊かな発想を◇

 昔からものを作ったり、絵を描いたりすることが好きでした。父親や親戚が建設関連の仕事に携わっていたので、建設業は身近に感じていました。

 東急建設に入社後は土木の現場に7年、建築の現場に3年ほど勤務しました。現場で見聞きするものすべてが新しく、当時は必死でしたが毎日が楽しかったと記憶しています。会社の先輩や職人の方々にかわいがってもらい、教えられたことは今でも明確に覚えています。

 若いころ上司に掛けられた言葉で強烈に覚えていることが二つあります。
 一つは「職場の人との付き合いも必要だが、違う世界で生きている人と話すことも大切だ。世間を知ることで自分の立ち位置や振る舞いを見直すきっかけになる」。

 今では異業種交流などのイベントも見受けられます。当時はそうした出会いの場が少なく、知り合いなどの人脈を通じて、仕事とはまったく関係のない人たちが集まるような場に入れてもらいました。建設業界では当たり前だと思っていたことが、外から見ると不自然、異質に感じる人たちもおり、新たな気付きと刺激を得ました。

 もうひとつは「心に余裕と遊び心を持て、そうしないと新しい発想や想像力は生まれない」と言われたことです。入社間もないころ横浜市内の造成現場で大雪が降り、急に現場が休みになったのでどうしようかと考え、仲間と雪だるまを作りました。地域の子供たちも加わり、楽しく過ごしました。

 オンとオフは明確に分け、プライベートでもゴルフや釣りなど、趣味は豊富です。釣った魚も自分で調理することを目指し、和食専門の料理教室に10年通っています。

 10年の現場勤務を経て、その後25年間は営業畑を歩んできました。工事を受注し形にするゼネコンの事業で、最先端に位置する営業の仕事に、誇りと同時にプレッシャーも感じました。昨年策定した中期経営計画で、将来の「ありたい姿」の実現に向けた柱の一つに「顧客起点と現場力による建設事業の強化」を掲げています。営業マンは単なるご用聞きではありません。顧客が求めているものを理解し提供できれば、それに見合う対価を得ることができます。

 後に続く後輩の育成も不可欠です。昔の子どもたちは自ら遊び方を考えていました。最近はTVゲームなど与えられるものがあふれ、自ら考えなくても遊べます。受動的になりがちな世代ですが、手取り足取り育てるのではなく、自分が経験したものを伝えながら、その中から若手自身が良いものかどうかを判断し、吸収してもらえればと思います。

 社会全体の変化のスピードが速まっています。視野を広げ、後輩たちが建設業界で成功するために今何ができるかを問いながら、今後も前進していきたいと思います。

入社後間もなく配属された造成現場での一枚。
自作の雪だるまとツーショット
(ひぐち・としひろ)1983年桜美林大学文学部卒、東急建設入社。2015年執行役員、16年同営業本部副本部長、18年現職。東京都出身、58歳。

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