大手ゼネコンが宇宙ビジネス参入に本腰を入れる。フロンティア分野の宇宙開発事業は今後の成長が期待され、建設業がインフラ整備などで培ってきたノウハウが生かせる分野とされる。専門部署を立ち上げ、宇宙滞在に必要な技術の研究開発に取り組む企業や小型ロケットの打ち上げに協力する企業も出てきた。
今年に入ってから宇宙関連の技術や取り組みを発表するゼネコンが相次ぐ。大林組は3月、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」で航空宇宙産業向け先端材料、カーボンナノチューブ(CNT)の耐久性を確認するために行った暴露(ばくろ)試験の結果を発表した。
静岡大学、有人宇宙システム(東京都千代田区、古藤俊一社長)との共同プロジェクト。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の簡易暴露実験装置の利用テーマに採択された。使用したCNTは、高品質で長尺のより糸形状で、直径約20ナノメートル(1ナノメートルは1ミリの100万分の1)の多層繊維をより合わせた。大林組は2050年の実現を目指す「宇宙エレベーター建設構想」で、エレベーターのケーブルの素材にCNTを使うことを提案している。
清水建設は4月の機構改革でフロンティア開発室を新設し、宇宙開発部などを設置した。今月2日にはキヤノン電子、IHIエアロスペース(東京都江東区、牧野隆社長)、日本政策投資銀行と共同で設立した新世代小型ロケット開発企画(東京都港区、太田信一郎社長)を増資し、社名を「スペースワン」に変更したと発表した。
同社の資本金は当初の1億円から14億円に増え、小型衛星を搭載する小型ロケットの開発と製作に取り組む。21年度内に初弾となるロケットの打ち上げを予定。2020年代半ばに年間20機の打ち上げを目指す。清水建設は宇宙関連のコンサルティングなどを行う子会社と共に、宇宙輸送サービスで必要なインフラなどのノウハウを提供している。
竹中工務店は同日、宇宙滞在に必要な技術の研究開発に本格着手したと発表した。東京理科大学のスペース・コロニー研究センター(センター長・向井千秋特任副学長)に参画。産学連携で2030年以降を見据え、宇宙滞在に必要な技術の研究開発に取り組む。
同センターは閉鎖環境で人間が長期滞在するための技術を研究開発する拠点で、同社はスペースアグリ技術と水・空気再生技術の検討チームに参画している。うち、スペースアグリ技術は資源が欠乏する環境で自給自足を実現し、宇宙空間での食糧問題の解決を図る。低気圧環境でLED照明を使って苗からレタスなどの植物を生育する実験を行っている。
同社は3月、技術研究所にスペース・フロンティアグループを立ち上げ、産学連携による宇宙滞在技術研究を強化している。
竹中工務店が参画する東京理科大の 「スペース・コロニー研究センター」概念図 |
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