2018年7月3日火曜日

【臨海副都心に新名所】森ビル、東京・江東区にデジタル美術館開業

森ビルは6月21日、東京都江東区の臨海部に大規模なデジタルアートミュージアムを開業した。斬新で好奇心を刺激する作品群を体感しようと連日訪れる大勢の来場者で館内はにぎわいを見せている。今回の開業によって同社は、東京の新名所を創出するだけでなく、「文化・交流」機能を強化することによって、東京の魅力を高めながら、都市としての競争力を向上させようとしている。

 ミュージアムの名称は「MORI Building DIGITAL ART MUSEUM:EPSON teamLab Borderless」。同社が運営に参画する大型複合施設「お台場パレットタウン」内の大観覧車の下に位置する施設で、デジタル技術による芸術作品を手掛けるチームラボ(東京都文京区、猪子寿之代表)と共同で運営する。

 約1万平方メートルの広大な空間には、コンピューターやセンサーによって生み出された約50の芸術作品が展示されている。ミュージアム全体のコンセプトは「ボーダーレス」。先端技術を駆使したこの施設では、壁や床に投映された映像作品に鑑賞者が触れると作品が変化するほか、作品が施設内を移動し、他の作品とコミュニケーションをしたり融合したりする。他者が変化させて生みだしたアート作品を見たり、作品を共創したりすることもできることから、「鑑賞者と作品」「作品と作品」「鑑賞者と鑑賞者」の境界を超越する、まさしくボーダーレスな世界が広がる。

 猪子代表はこのミュージアムについて「来場者は迷い込み、さまよいながら自らの体で探索し、時には没入し、さまざまなものを発見していく。新しい体験を作り上げる世界だ」と語る。

展示スペースは▽Borderless World▽チームラボアスレチックス運動の森▽学ぶ!未来の遊園地▽ランプの森▽EN TEA HOUSE-の五つの空間で構成する。

 Borderless Worldは、このミュージアムのコンセプトを体現する空間で、今回のために作られた滝の映像が投映された作品を展示している。鑑賞者が滝の水流の上やそばに立つと、そこに花が咲き乱れる。歩みを進めると足元に花が咲き、進んだルートに花の軌跡が生まれる。近くをほかの鑑賞者が歩くと、その軌跡と混ざり合って、新たなアート作品へと変化していく。

 運動の森は「体で世界を捉え、世界を立体的に考える」がコンセプトで、「光の立体ボルダリング」などの作品を設けた。作品の中に鑑賞者が入り込み、体を使って味わうエリアだ。未来の遊園地は「共同的な創造性、共創」をテーマに、滑り降りると投映された映像内のフルーツが動いたりはじけたりする「すべって育てる!フルーツ畑」などの作品を展示。ランプの森は、鑑賞者がランプの近くで立ち止まっていると最も近いランプが強く輝き音色を響かせる仕様。それが近くのランプに伝わり、光と音が連続的に広がっていく。

喫茶スペースのEN TEA HOUSEは、提供されたお茶の茶わんの中に映像で花を投映する。お茶を飲もうと茶わんを持ち上げると咲いていた花が散り、また茶わん内に新たな花が咲く。お茶がある限り花々が無限に咲いていく。

 デジタルミュージアムの開業式典で森ビルの辻慎吾社長は「施設には、世界に類を見ないミュージアムをつくり都市の磁力を高めたい、東京から世界に現代アートを発信したい、子どもたちに新しい学びの場を提供したいという三つの思いを込めた」と明かした。東京は強固な経済力を持つ世界屈指の大都市だが、文化やアートといった要素で、英ロンドンや米ニューヨークなどに後れを取っていると指摘される。

森ビルはこれまで、1986年開業のアークヒルズ内のサントリーホール(東京都港区)、六本木ヒルズ内の森美術館など(同)、文化的な要素を織り交ぜた開発を展開。開発後も周辺地域を巻き込んだ文化交流イベントを主催するなど、魅力的な都市の形成に貢献してきた。

 同社は2年後に迫った2020年東京五輪の開催を好機ととらえ、五輪競技施設などが集積する東京の臨海部に、デジタルアートという最先端技術を駆使した現代アートの発信拠点を置くことで、東京のさらなる飛躍を力強く後押ししていく。

0 comments :

コメントを投稿