2019年2月25日月曜日

【駆け出しのころ】日本電設工業代表取締役副社長・田中均氏


 ◇職場内外で人の輪を広げる◇

 幼少期、身の回りにあったおもちゃの仕掛けがぜんまいから電動モーターに変わり、どのように動くのかを知りたくて分解していたのが、電気の世界に興味を持ったきっかけでした。

 就職活動ではメーカーや銀行関係の電算センターなどを志望する仲間が多かったのですが、現場でスケールの大きな仕事がしたいとの思いが強く、縁あって日本電設工業に入社しました。大学の担当教授からは「建設の世界でも安全や品質管理など緻密さが求められ、スケールの大きさにこだわる考え方は改めた方がいい」とアドバイスされました。

 入社後は設計・積算関連の部署に配属されました。当時は現場が花形で、設計や積算は裏方のイメージが強かったです。しかし最初の2年間で積算・見積もりから受注後の実行予算編成まで一連の流れを把握できた経験は、その後に経験した現場勤務での予算管理に大変役立ちました。

 本格的に勤務した最初の現場は東京都豊島区のサンシャイン60。大現場で過ごした4年間で、社内外の多くの方々にさまざまなことを教えてもらいました。人脈が一気に広がり、後の現場で同じメンバーと顔を合わせることもありました。

 より良いものを作り上げるために会社の垣根を越えて現場が一体になる。他社の人間も厳しく指導してくれる先輩技術者が多かった時代です。厳しさの中に優しさがあり、一人前になるためにさまざまなアドバイスをいただきました。横のつながりが今よりも深い時代だったと思います。

 ある商社の本社ビル建設現場で、施主側の担当役員の方から「皆さんはものすごく幅広い方々と付き合われ、人としても鍛えられる面白い仕事ですね」と言われたのを覚えています。

 工期の長い現場では結束力が一段と強まり付き合いも濃くなります。工事中はもちろん、完成後も電気設備のJV関係者らを中心とした同窓会を定期的に開くほどです。

 仕事とはまったく別の世界で人の輪を広げることも重要です。中学時代から50代半ばまで続けてきた流鏑馬(やぶさめ)は私の人生そのものです。運よく稽古場に近い在京の現場が多かったこともありますが、本気で打ち込める仕事とプライベートの時間を持つことは、人生をより豊かにしてくれます。もちろん両立は大変ですが、いつでも前向きに笑いながら取り組むことで、公私ともにいい効果があると思います。

 これから建設業だけでなく世界が大きく変わろうとする中で、より広く、深い見識を備えた人材の重要性は高まります。特に若い人たちには仕事以外にも視野を広げていろいろな人と知り合い、さまざまな経験をしてもらいたい。

 働き方改革で休みが増え、自由な時間も増えます。その時間をどう使うかで自分の人生も変わります。みんなが夢とプライドを持って楽しく働ける建設業界になるように今後も微力ながら頑張っていきたいと思います。

入社3年目。日光東照宮で流鏑馬を奉納
(たなか・ひとし)1973年上智大学理工学部電気電子工学科卒、日本電設工業入社。東京支店長や北海道支店長、営業統括本部長、常務、専務などを経て15年から現職。埼玉県出身、68歳。

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