高所作業を伴う建設現場などでフルハーネス型墜落制止用器具(安全帯)の着用を原則化する改正労働安全衛生法令が1日、施行された。
墜落制止用器具のメインユーザーになる建設業界は、使用範囲が限定される従来の胴ベルト型も含め作業分野別・高さ別の推奨基準を策定。現場の混乱緩和に細心の注意を払っている。一方、メーカー各社は大きな商機と見て新製品開発に注力している。
改正法令では高さ2メートル以上の場所で作業床や手すりなどを設けるのが難しい場合、墜落制止用器具の着用を規定。墜落制止用器具はフルハーネス型を原則化し、高さ6・75メートル以上の場所で着用を義務付ける。全産業の中でも墜落・転落災害が多い建設業には高さ5メートル以上の作業でフルハーネス型の着用を推奨。これらの基準値より低い場所での作業なら、引き続き胴ベルト型も着用できる。経過措置として従来規格の安全帯は22年1月1日まで着用と販売を認め、同1月2日から全面的に禁止する
改正法令の施行に合わせ、墜落制止用器具のメインユーザーとなる建設業界は着々と準備を進めてきた。昨年12月、日本建設業連合会(日建連)と建設労務安全研究会(労研)が共同で指針を公表。作業時の現場状況や取り組み内容、高さなどさまざまな条件を想定し、それらの内容ごとにフルハーネス型または胴ベルト型の活用を推奨している。
指針に対する反響は大きく、日建連以外のある建設業団体の担当者は「高さなどによっては胴ベルト型で差し支えなく、この辺を巡りまごつくことが想定される。よって指針が大変参考になる」と話す。
改正法令の内容については、墜落制止用器具を実際に着用し作業を行う専門工事業が十分に理解し、順守することが課題となる。法令を改正した厚生労働省によると、最大ユーザーとなる建築系のとび工事業をはじめフルハーネス型の着用を先行する関係者も多い。一方、法令上の労働者に該当しない一人親方も含め、法令の内容が建設業の隅々にまで行き渡っていない可能性もある。今後も労働安全をテーマとする講習会などさまざまな機会を通じて、改正法令の説明と順守の呼び掛けに努める方針だ。
一方、メーカー各社は改正法令を大きな商機と捉える。施行直前の1月、複数のメーカーが新製品を相次ぎ発表。とび工事業向けや女性向けなど、作業の汎用性や体格に考慮した工夫を凝らしている。
国内の大手安全帯メーカーで構成する日本安全帯研究会によると、公表している最新時点(15年)の墜落制止用器具(当時は安全帯)の出荷数は、フルハーネス型が約13・8万本で、胴ベルト型がほぼ10倍の約127万本。ある大手メーカーの幹部はこの割合が逆転していく可能性が高いと見ている。
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