2020年8月3日月曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・262

社会人になっても学ぶ機会ははくさんある

 ◇変化を受け入れ「学び」続ける◇

 大学で建築を学んでいた北原奈々子さん(仮称)が就職活動を始めた2000年の秋は、就職氷河期の真っただ中だった。思うように就職先が決まらない同級生も多かったが、幸いにも志望した照明デザインの事務所に就職が決まった。入社から2年がたったころ、「仕事内容のミスマッチではなく、やりたいことの幅が広がってきた」と転職を決意した。

 店舗を中心に内装の設計・施工を手掛ける会社に入社した。制作職として主に飲食店の新装・改装工事の施工管理に従事することになった。前職の経験が全く通用しないとまでは言わないが、現場の経験値はほぼゼロ。職人と十分に会話ができず失敗したことも多く、自身の経験や知識のなさを痛感した。そこで知識の習得を目的に2級建築士の資格取得を入社1年目の目標に掲げた。

 大学時代を振り返ると特に優れた成績だったわけでもなく、秀でた能力を発揮していたわけでもない。学業の傍らサークル活動やアルバイトに励むなど、一般的なキャンパスライフを過ごしてきた。「目標に向かって学ぶのは大学入試以来だったかも。学ぶこと事態が新鮮で楽しかった」。1回目の受験で無事に合格できた。

 施工管理の業務も3年が過ぎたころ、現場を見る視野が広がってきたと実感。1時間、現場を確認して回った時、収集できる情報量が1年目よりも2年目、2年目よりも3年目と着実に増えていた。そんな時に営業職への異動を命じられ、店舗改装のPM(プロジェクトマネジメント)業務に携わることになった。

 設計者や施工者、サプライヤー、行政機関などとの調整や、プロジェクトを引っ張っていくため、さらなる知識が必要と感じ、職種転換をきっかけに1級建築士の資格を取得した。顧客の経営者や事業担当者などと話す機会が増えてくると、空間づくりは素材や形状などのデザイン以上に、投資でリターンが得られるという経営者、事業者の視点が重要と気付かされた。

 「顧客と同じ目線に立って、空間づくりを軸に課題解決が提案できるようになりたい」と一念発起。経営を学ぶため専門職大学院に入学し、社会人と学生の二重生活を経てMBA(経営学修士)を修了した。

 店舗や施設などのメンテナンスを専門とする部署の立ち上げに参画する機会を得た。現在はこのメンテナンス部門の管理職として、中長期の事業戦略や業務改善計画などの策定に携わっている。さらに関連会社の非常勤取締役を兼任し、経営的な観点でのマネジメントも担うことになった。

 時代と共にトレンドやテクノロジーなどは目まぐるしく変わる。自分自身も年を重ね役割や立場も変化する。「その変化にあらがわず、変化を受け入れ、必要に応じた学びによって進化していく」と自身のキャリアを振り返る。今後も継続的に「学び」を大切にしていく。

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