◇人とのつながりが財産に◇
土木技術者として全国の現場での出会いが、さまざまな縁をつないでくれたと思います。大学卒業後、地元・北海道の建設会社に入社し、大成道路(現大成ロテック)が施工する現場に2年間技術者として関わり、当時の現場の作業所長にも気に入られ、大成道路に入社することになりました。
舗装が専門ではなかったものの、土木工事の現場経験は豊富だったことから、北海道支社時代は冬季転勤で全国の現場から声が掛かりました。親会社の大成建設に出向する形で現場に配属され、千葉モノレールの関連工事など、都市土木を中心に特殊工事をよく任されました。
30代前半の札幌作業所時代に担当したサッポロビールの大規模開発プロジェクト「サッポロファクトリー」も思い出深い現場です。12社構成のJVで職員約50人のうち、土木技術者は出向者の自分一人。建物同士をつなぐ地下通路を構築する現場で、供用中の幹線道路をオープン掘削で覆工する難工事でした。道路下には数十本の埋設管があり、つり防具で管を支えて随時監視しながらの掘削作業。万が一、大きなガス管や水道管を破損したらと想像すると、冷や汗が止まりませんでした。
入社8年目には当社最北の遠別作業所に異動し、舗装関連の仕事が中心となりました。遠別での9年間は舗装のことを勉強しながら合材の工場長、作業所長を任せてもらいました。生まれ故郷に近く、身内の看病などで大変だった時も部下のみんなが作業所を守り、支えてくれました。感謝の言葉しかありません。
昔から一度仕事を一緒にやると、長年付き合ってきたような感じでみんなと親しくなりました。現場の職長や一般の作業員など、多くの方々に「植さんの現場ならどこにでも行くから」と温かい声を掛けられるのはありがたく、人とのつながりはかけがえのない財産です。
人との付き合い方で特に意識していることはありませんが、地元で建設業を営んでいた父親の「人の集まらない家、人が集わない会社は栄えない」という言葉が今も耳に残っています。幼少のころから周囲に多くの人たちが集まっていたので、基本はさみしがり屋なのだと思います。
若い人たちには技術的なことよりも、ものづくりに携わる思いを伝えていきたい。良いものを造ることへの執着を持ち、仕事を好きになること。誰でも好きなものは真剣になれます。安全も含めてより良いものづくりにはこうしたマインドが欠かせません。責任の大きさから現場所長になりたがらない若手もいるようですが、人との関わりを大切にしながら所長を目指してものづくりの面白さを味わってほしいです。
30代前半、北海道の土木現場で |
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