2021年9月6日月曜日

【大会施設の管理運営が課題】東京五輪・パラリンピック閉幕、建設業の貢献をレガシーに

東京五輪・パラリンピックで体操やボッチャが行われた有明アリーナ。
大会に合わせ整備した恒久施設は適正な維持管理・運営が課題になる

  東京で57年ぶりに開催された五輪・パラリンピックが30日間の全日程を終えた。大会に合わせ新築した国立競技場(東京都新宿区)や有明アリーナ(同江東区)などの施設は多目的で使っていく予定。大会のレガシー(遺産)として建設業が施設整備や円滑な大会運営に貢献した実績を広く発信し、施設の適正な維持管理・運営に努めていくことが求められる。

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が収まらず、近代五輪で初めて開催を延期した東京五輪・パラリンピック。原則無観客で選手や関係者も外出禁止という、異例ずくめの大会になった。厳しい状況でも当初予定した全日程を予定通り消化。大会運営には建設業も積極的に協力し、大会期間中は会場周辺での工事抑制などに努めた。

 開・閉会式や競技会場になった国立競技場や有明アリーナなどの大会施設は、最先端の建築技術や省エネルギー技術を取り入れ、国産木材もふんだんに使用した。新型コロナの流行前、建設業界は競技施設が日本の技術力を結集したショールームになり、インフラ輸出の拡大などにつながると期待していた。だが無観客での開催になり、当初のもくろみは十分果たせなかった。新設した競技会場を訪れた人は国内でもまだ少なく、高い技術力や優れた機能、デザイン力を国内外に発信するための広報戦略が必要になりそうだ。

 施設の適正な維持管理と運営も大きな課題といえるだろう。五輪など大規模イベントを開催した後は、どの国でも施設の維持管理コストをどう捻出するか苦心している。収益見通しが甘く、大会後に放置され草木の生い茂る廃墟のようになったケースも少なくない。

 国立競技場を管理している日本スポーツ振興センター(JSC)は、コンセッション(公共施設等運営権)の導入を検討中。国立競技場以外の新規恒久施設を建設した東京都は、有明アリーナにコンセッション、他の施設には指定管理者制度を導入している。いずれも委託先とはコロナ禍前に契約。契約時点と経済・社会情勢は大きく変わっており収益確保は厳しいだろう。現状や将来見通しを踏まえた見直しも不可欠だ。

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(橋本聖子会長)は、大会レガシーとして施設を貴重な財産として未来に引き継ぐ目標を掲げている。都民、日本人にとって誇れる記憶として残していくためにも、建設業のさまざまな貢献を後世に伝えていくことが、今後の課題になりそうだ。

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