フランス・パリの凱旋(がいせん)門が布で覆われている。「梱包(こんぽう)」芸術で知られ昨年亡くなった芸術家クリスト氏(ブルガリア出身、1935~2020年)と、妻で芸術家のジャンヌ=クロード氏(モロッコ出身、1935~2009年)が長年温めていた構想という▼包まれることで細かい装飾は見えなくなるが凱旋門の形が浮き出て強調される。プロジェクトをニュースで見て、約10年前に日本で行われた講演会での「隠すことで現れるものがある」という言葉を思い出した▼プロジェクトの実現に向け行政や関係機関との交渉、建設工事にも匹敵する技術的検討などアートと無縁のような問題を一つ一つ解決し膨大な作業を積み上げる。当時75歳近いクリスト氏だったが、熱意とエネルギーあふれる講演に感銘した▼作品を2~3週間で撤去するのが流儀で凱旋門のラッピングも10月3日まで。強烈なインパクトで現代社会に何を問い掛けるのか。氏の言葉とともに考えさせられる▼コロナ禍の閉塞(へいそく)感のある生活が続く。だからこそ人々の想像力をかき立てるアートが必要なのかもしれない。
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