ID&Eホールディングス(HD)が東京海上HDの子会社となり、建設コンサルタント分野で培った経験・技術と損害保険サービスを掛け合わせた新ビジネスモデル「民間防災コンサルティング」を本格展開する。東京海上HDによるTOB(株式公開買い付け)が5日に成立、13日に連結子会社となり5月にも臨時株主総会を経て完全子会社となる見通しだ。今後、両HDの経営資源や顧客ネットワークを積極活用し、発災前の防災・減災の取り組みや発災後の復旧・復興対応で新たな商機を探る。既にHDの事業会社らで構成する分科会を中心にサービスモデルの検討に入った。市場や顧客のニーズを見定めつつ、潜在需要の掘り起こしを進める。
民間防災コンサルティングでは、顧客が展開する事業や保有施設などの災害リスクの分析評価や点検といった事前領域から、発災後の保険金支払いや復旧などの事後領域にわたるサービスを一貫して提供する考え。日刊建設工業新聞の取材に応じたID&EHDの新屋浩明社長は「数年先まではある程度の事業量が見込まれ、現在の体制でもやっていけるだろうが、2030年以降は成長していけるか見通せない」と分析。公共分野など従来事業に引き続き注力する一方、民間顧客との接点を増やし新事業の拡大で中長期的な成長ビジョンを描く。
現在、損保会社の災害関連サービスの中心となっているのは、発災後の保険金の支払いだ。「津波や液状化などのリスク評価、被害を防ぐための点検といった発災前の対策までカバーすれば、より顧客のニーズに寄り添った保険サービスを提供できる」と新屋社長。「当社グループには災害の事前領域に対応した多種多様な工学技術があり、発災後の復旧に関するノウハウも生かせる」と自社の強みをアピールする。
ID&EHDは民間防災コンサル分野での事業化を主導するビジネス協業全体会議の下にビジネス協業分科会を設置。現在、分科会は防災(構成企業・日本工営)、都市空間(日本工営都市空間、日本工営)、エネルギー(日本工営エナジーソリューションズ、日本工営)の三つで構成する。東京海上HDと協力連携し提案内容を擦り合わせながら互いの強みを生かしたサービスを検討していく。
ID&EHDは東京海上HDが国内外に持つ顧客ネットワークを生かし民間市場への参入拡大を目指す。人口減少や社会保障費の増大などで公共事業関連予算の増加が期待できない中、民需の開拓を急ぐ。新屋社長は「民間事業へのアクセスは公共事業よりもはるかに難しい」とし、完全子会社化がデータや人材を共有しながら仕事をするための最善策になると判断。今回のTOBに当たり「行動できるのは業界に余力がある今しかなく、『やらないリスク』を考えた。私たちは技術を、東京海上HDは保険を通じて、世のため、人のため、同じ目線で社会貢献に取り組んでいる企業であることを確認できた」と振り返る。
民間市場では公共発注のような仕様書などはなく、提案力とスピードがより問われる。これまでにないソリューションの提供に向け、まずは両HDで互いのことをより深く知りながらシナジー(相乗効果)を追求していく方針だ。
from 企業・経営 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171668
via 日刊建設工業新聞
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