2025年2月26日水曜日

ハタコンサルタント・降籏達生社長に聞く/教育充実で定着率向上へ、全国7会場で研修

 建設業界の喫緊の課題の一つである人材の確保・育成。官民一体で地道な取り組みが進められているが、離職率の高さも見逃せない問題だ。全国で企業向けのセミナーや新入社員教育などに長年携わっている降籏達生ハタコンサルタント社長に問題点などを聞いた。
 --会社設立の経緯は。
 「小学生の時に映画『黒部の太陽』を見て土木の道に進んだ。岐阜県養老町の排水機場の現場を皮切りにダムや橋梁などさまざまな現場を経験したが、阪神・淡路大震災で故郷の惨状にショックを受け1995年3月に会社を立ち上げた」
 「当時の建設業界は、研修など体系的に学ぶ風土がなかった。学びの場は現場で私自身も非常に苦労した。入札・契約制度が変わり企業に技術力が求められるようになり、特にここ10年は技術研修の熱が高まってきたと感じる。弊社は名古屋市内に本社を置くが、全国で技術研修や技術コンサルティングを行っている」
 --建設業界が抱える課題は。
 「一番の問題は定着率の低さだ。入社後3年以内の離職率は大卒で3割、高卒で5割。残業が多く休日が少ないといった点は改善されつつあるが、それでも定着しないのは、社員教育を行っておらず新入社員が成長を実感できていないことが要因だ。このため、建設技術者のキャリア別能力向上システムを作成し企業に配布している。土木や建築などの業種、現場事務職、専門工事技術者を対象に、キャリアに応じて求められる能力と育成方法を体系立てて記した。新入社員を5年で一人前に育ててほしい」
 「弊社では『新入社員育成2カ月コース』を設けている。社会人としての基本と現場ですぐ使える基礎知識が身に付く建設業に特化した研修だ。建設業特有の専門知識やノウハウを身に付けてもらう。今回は内容に応じA~Dの4コースに分けたが、研修で得た知識を現場で実践する建設業に合った教育方法だ。1クラス約40人で行っており、仲間ができることで定着率も上がる。今年も札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の7会場で4月から行う。オンラインでも実施する」
 「動画研修受け放題システム『ハタコンムービー』も若者に好評だ。月額740円のサブスクリプションで、現場で分からないことはスマートフォンやタブレットで確認できる。企業にとっては採用ツールの一つになっている。教育経費を惜しまない企業は伸びている。新入社員も自分のスキルに応じて求められる内容、達成度が理解できると仕事の楽しさ、やりがいを感じるはずだ。全部理解すれば一人前になれる、と思うことが『希望』につながるのではないか」
 --外国人技術者の活用は。
 「ベトナム人技術者への支援や日本企業との橋渡しを行っている。現地の大学と提携し土木、建築、電気を学んだ後、われわれが設立した日本語学校で1年間教育を受けた優秀な人材をオンラインで面接し、紹介している。就職後、2年で2級土木施工管理技士に合格した人もいる。日本の高い技術力を学びたい人は多く、意識も高い。前向きで優秀なベトナム人技術者に触発され、会社全体の意欲が高まった企業もある。今後も積極的に支援する」
 --会社が目指すものは。
 「全国各地で自然災害が多発し激甚化している。自然災害は止められないが、被害は最小化できる。日本の国土や生命、財産を守ることが建設業の使命。そのための技術力を高めることがわれわれの仕事だ。建設業は不人気な業種であることは事実だが、将来は子どもたちがなりたい仕事のベスト3に建設業が入ることが私の夢であり目標だ。そのためには建設会社や働く人たちが、技術や身だしなみも含め『かっこよく』なる必要がある。世間から見てかっこ良く、子どもの憧れになるような建設業、建設技術者になるための支援を行っていきたい」。

 (ふるはた・たつお)1983年大阪大学工学部土木工学科卒、熊谷組入社。阪神・淡路大震災を機に95年退社、同年ハタコンサルタントを設立。兵庫県出身、63歳。




from 企業・経営 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171670
via 日刊建設工業新聞

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