阪神高速道路会社と阪神高速先進技術研究所は4日、大阪市内で「阪神・淡路大震災から30年特別講演会・座談会」を開いた。関西圏の人流・物流を支える阪神高速グループとして、震災から得た経験や教訓、技術を風化させず、どのように未来へつないでいくのか。座談会には震災を経験したグループ社員が登壇。当時の状況や対応を振り返り、今後の大規模地震への備えなどを議論した。
阪神高速グループの社員ら約250人が参加。開会に先立ち、原広行総務人事部長が「震災後に入社した社員が約8割を占める中、震災から得た教訓を胸に刻みながら次世代につないでいきたい」と話した。
第1部では国土交通省国土技術政策総合研究所の星隈順一道路構造物研究部長が「阪神・淡路大震災の教訓を活かす、進化させる~最近の震災経験から振り返る~」をテーマに講演した。1992年に国交省に入省後、主に耐震設計の技術基準に携わってきた星隈氏。兵庫県南部地震後に担当した調査や研究、技術基準改定の業務を振り返り、その後の地震に生かされたことなどを解説した。「日本の耐震対策、復旧対策技術は世界トップクラス。ハイテクだけでなく、ローテクな技術を含め海外への展開も期待している」と話した。
第2部は神戸線復旧建設部、神戸管理部などで復旧に尽力した阪神高速グループの社員が「震災当時の経験・記憶の伝承、震災を経てこれからの阪神高速」をテーマに座談会を行った。
パネリストは阪神高速会社の林田充弘保全交通部長、伊藤学技術部長、遠藤厚総務人事部総務担当部長、小林寛保全交通部保全技術担当部長、糸川智章建設事業本部神戸建設部長、葉玉博文神戸管理・保全部保全事業総括課長、庄直之阪神高速技研執行役員、竹中寛人阪神高速パトロール執行役員、下野靖洋阪神高速トール神戸藍那営業所長。コーディネーターを金治英貞阪神高速先進技術研究所理事長が務めた。
神戸線・湾岸線の被害調査や構造物・施設の応急復旧対策、本復旧に向けた設計や施工など、昼夜を問わず持ち場、立場で対応に当たった実体験を振り返るとともに、鋼管集成橋脚をはじめ新たな防災・減災技術なども紹介した。
震災の教訓をどのように未来へつないでいくのか。林田氏は「当時、熱い思いを持って頑張る先輩の姿が本当にかっこ良かった。若い人にもそうした熱意やかっこ良さを伝える必要がある」と指摘。会場の参加者に向けて伊藤氏は「それぞれ人が肌で感じた震災はさまざま。次の世代にも大震災で起こったこと、その後の地震対策などを後世に語り継いでほしい」、糸川氏も「常にお客さまの大切な命を預かっていることを意識し、日々の業務に取り組んでほしい」と呼び掛けた。
庄氏は「何事にも探求心を持って取り組むことが自身の成長につながる」とアドバイス。「当時は前だけを見て仕事をしていた」とという竹中氏は「平時からより良い道路サービスを追求し続けている阪神高速グループであれば、どのような天災でも乗り越えられる」と期待した。
遠藤氏は「非常事態の中、頼もしく働く先輩の姿を間近に見られたことが会社人生の大きな財産。つらい時も当時を思うと頑張れる」と語った。小林氏は「何事もシナリオ通りに進むとは限らない。時には臨機応変な対応も求められる。その中で常に自分がやるべき役割を認識しておくことが大切だろう」と強調した。
葉玉氏は「神戸線復旧建設部では判断や行動の早さ、部署間連携が非常に良かった。必ず前に進めるという気迫が伝わるリーダーの存在が大きかった。これは平時でも共通する」と強いリーダーシップの必要性を指摘。下野氏は「震災未経験者が理解することは難しいかもしれないが、映像や資料、先輩たちの話などから思いを巡らせ、起こった場合にどう行動するかを想像してほしい」と訴えた。最後に金治氏が「インフラ企業にとって安全は最優先事項。阪神・淡路大震災の対応なども含め、日常業務で安全を追求する礎になればと思う」と締めくくった。
from 行事 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171217
via 日刊建設工業新聞


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