◇欧州に負けない産業に
国土交通省から1月20日付で設立が認可された。政府は洋上風力を再生可能エネルギー主力電源化の切り札に位置付けている。浮体式の普及拡大を巡る期待は大きく、大量導入とコスト低減、海上施工全体の最適化が一層求められてくる。大量急速施工を実現する「合理的な建設システム」の構築と、「適切な建設コスト」の達成を研究目標に掲げ、「欧州に負けない産業を作りたい」と意気込む。
--設立の経緯を。
「政府が浮体式を含めた洋上風力で2040年までに45ギガワットの案件形成を達成する目標を掲げている。普及には事業コストを抑え、風車建設の工程を一貫して行う大量急速施工でないと難しい。協調領域となる基地港湾などのインフラ整備に提案・提言できる団体として設立した」
--普及への課題は。
「組合設立前、浮体式の動きが活発な欧州を何度も視察した。フランスや英国などは基地港湾やウェットストレージ(仮置き場所)といった風車建設に関するインフラを整備し連携させ、風車を大量急速施工しようとしていた。風車メーカーもインフラ整備された国から優先して供給する動きを見せている。欧州の計画に追い付くか、追い抜くぐらいのスピードで協調領域を整備しなければ日本に安く風車が供給されず、ビジネスを展開できないだろう」
--大量急速施工にどう取り組む。
「電力会社など事業者で構成される浮体式洋上風力技術研究組合(FLOWRA)と意見交換していく。浮体形状がセミサブ型かスパー型か各事業者で違うためどちらに重きを置いているかを議論する。セミサブ型は港湾内でも港湾外でも施工できるが、スパー型は港湾外で施工するため、それだけの準備が必要だ」
「1年中、洋上風力建設に従事できるのが理想だ。日本海側と太平洋側で作業時期が異なり日本海側は冬場に海上仕事ができない。現地の据え付けを夏に行い、冬場に浮体を作って風車も搭載し係留するなど、さまざまな事業者が複数プロジェクトで同時並行に建設できるようにしたい」
--今後の展望を。
「浮体式の専用港湾をいつまでにどんな規模で構築するかの計画を打ち出している国が多いのに対し、日本は構想をはっきり打ち出していない。構想があれば、造船や浮体メーカー各社が動きやすい。技術的な課題も含めサプライチェーン(供給網)を踏まえた提言が必要だ。大量急速施工のためのインフラ整備のビジョンを打ち出し、国に支援してもらえるように標準シナリオを作る。25年度に組合としての協調領域の方向性を国に示す。1拠点で年間30~40基の風車整備を目標としたい」。
(1月20日就任)
(のぐち・てつし)1983年京都大学工学部土木学科卒、五洋建設入社。2012年執行役員、18年取締役兼専務執行役員。団体活動では日本埋立浚渫協会技術委員長、洋上風力部会長として洋上風力での港湾支援の在り方など海洋土木の実務経験から課題解決に取り組む。大阪府出身、64歳。趣味はゴルフと美術館巡り。
from 人事・動静 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171333
via 日刊建設工業新聞


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