久米設計、大成建設らがコミッショニング(性能検証)を担当した「愛知県環境調査センター・愛知県衛生研究所新本館・研究棟」(名古屋市北区)が、米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE)が主催する「ASHRAE Technology awards」の公共施設・コミッショニング部門で1位に選ばれた。コミッショニング単独での受賞は国内初。実施設計段階から性能検証・分析に取り組み、竣工後の運用改善で省エネ率100%以上の「net-ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」を実現した。
新本館・研究棟は県がPFIのBTO(建設・移管・運営)方式を導入して建替事業を進め、2019年春に運用を開始している。建物はS造4階建て延べ8147平方メートルの規模。新開発の熱駆動のヒートポンプを用いた2温水回収ジェネリンクや太陽熱集熱パネルなど、自然エネルギーを最大限に活用した超高効率熱源システムを導入。このほか、自然光を利用した照明エネルギー削減システム、単結晶型太陽光発電設備など、多種多様な創エネ・省エネ技術を駆使し、計画値で「Nearly ZEB」を達成した。
久米設計は基本設計・実施設計監修・工事監理と性能検証(実施設計以降)を県から受託した。第三者性を確保するために設計担当者とは別の性能検証チームを組成し、性能検証業務を推進した。PFI事業者の「あいちZEBサポート」は大成建設グループで構成され、実施設計と施工を大成建設、維持管理を大成有楽不動産がそれぞれ担当。竣工後から、大成建設エネルギー本部(現クリーンエネルギー・環境事業推進本部)のZEBサポートセンターも性能検証などの関連業務に携わった。
愛知県や設計・施工・運用者・利用者等の関係者らによるコミッショニング会議、ZEB推進会議を定期的に開き、名古屋大学の協力も得て各フェーズで綿密な性能試験・検証を実施。その成果として操作説明書や運用マニュアル、エネルギーレポートなどを適宜作成してきた。運用フェーズではエネルギー消費量の確認と削減活動に努め、運用開始から3年目の実績値として1次エネルギー消費量を101%削減し、net-ZEBを達成した。
今回の受賞は、久米設計として昨年の世界最優秀賞に輝いた「帯広厚生病院」(北海道帯広市)に続いて2年連続となる。コミッショニングを主導した同社環境技術本部ダイレクター兼環境計画センター長の横山大毅氏は「完成後の設備システムの試運転で予想外のことが多少発生し、各種データを分析しながら実性能のチューニングやシミュレーションモデルの再現性向上などに取り組んだ」と振り返る。
今後、省エネや脱炭素化関連の法規制が一段と強化される中、「公共施設もZEBが必須となり、工夫された設備システムほど性能検証が重要になる」と指摘。本案件の受賞を機に「国内でコミッショニング導入の動きが広まればうれしい」と喜びを語る。
from 企業・経営 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171298
via 日刊建設工業新聞


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