2025年2月18日火曜日

スコープ/新大宮上尾道路整備で大深度に橋梁基礎構築、施工は清水建設

 国土交通省関東地方整備局が埼玉県内で整備を進めている高架式の自動車専用道路「新大宮上尾道路」のうち、施工条件が厳しい区間で工事の最盛期を迎えている。国道16、17号が交差する「宮前地区」(さいたま市西区)は施工空間が十分確保できないため、ニューマチックケーソン工法を採用して橋梁の基礎工事を進めている。大深度に基礎を構築する工事に挑む清水建設の現場を取材した。
 新大宮上尾道路は国道17号で発生している慢性的な交通渋滞の緩和と県央地域の発展を目的に、さいたま市中央区~鴻巣市を結ぶ延長約25・1キロの自動車専用道路として計画されている。中央区円阿弥~上尾市堤崎(与野~上尾南)の約8キロは事業化され、国道17号の上空を通る高架構造を計画している。事業主体は関東整備局と首都高速道路会社の2者となっている。
 道路工事の中でも難関とされるのが国道17号の「新大宮バイパス」と「上尾道路」が分岐する宮前地区の橋梁基礎工事。2本の道路の間にある約13メートルの幅に新大宮上尾道路の橋梁基礎を計9基設ける。清水建設が5基(P87~P91)、東急建設が2基(P93、P94)施工を担当している。
 基礎工事に採用したニューマチックケーソン工法は、軟弱地盤や固い地盤にも利用できる。逆さまにしたコップを水中に押しつけると、気圧が働いて水の浸入を防ぐという原理を応用して開発された。地下水の浸入を防ぎながらコンクリートの箱を構築する。
 ケーソンの先端には天井走行式の掘削設備や排土設備などを使って土を掘り進める作業室が設けてある。地上では事前にリング状のケーソンを構築しておく。掘削した穴にケーソンをセットすると自重で沈下する。その後も土を掘り進めながらケーソンをセットするという作業を繰り返し行い一体化する。ケーソン1ロットは直径6メートル、高さ5メートル、厚さ1・2~1・5メートルの規模となっている。
 通常、橋梁基礎工事では既成杭を使用するケースが多い。杭を打設する際は周辺地盤の崩壊を防ぐ目的で土留めや支保工を設置する。最低でも幅20メートル程度の作業ヤードが必要になる。同工事の現場ではオリエンタル白石が開発した「スリムケーソン工法」を採用。幅は8メートル程度で済み、狭い空間での施工を可能にする。
 基礎の深さは最大57・5メートルを想定。ケーソンは27~28日間で5~6メートルのペースで設置する。地上から10メートルの深さまでは函内シャベルで掘削し、10メートル以深は事務所に据え付けているコントローラーで遠隔操縦する。
 清水建設では既に2基(P87、P89)の基礎工事を完了し、現在は3基同時に施工を行っている。同社の佐藤元信工事長によると「3基同時に施工を進めているため、延べ労働時間が最も長い」という。時間外労働の上限規制が適用されている中、週休2日制や建設キャリアアップシステム(CCUS)を導入して働き方改革にも注力する。
 基礎工事では常に高い品質確保が求められる。そこで、事務所内に設置した計測機器で施工状態を監視している。「函内圧力調整システム」を使ってケーソン内部の気圧を高め、常に地下水が浸入していないかをチェック。傾斜計でケーソンが水平を維持しているかも確認している。
 完成した道路をイメージしやすくするため、MR(複合現実)も活用。タブレット画面に映し出したパースを使い、警察協議や用地交渉などに役立てている。
 現場では35人の作業員が昼夜2交代制で工事に従事している。1月30日時点での進捗はP88が36・7メートル、P90は27・8メートル、P91が32メートル地点まで沈下している。
 物流の円滑化や首都圏中央連絡自動車道(圏央道)沿線からのアクセス向上に貢献する新大宮上尾道路。工事を所管する大宮国道事務所の久保智史工務課長は施工会社に対し「工事の安全性を確保しつつ、高い品質を期待したい」とコメント。清水建設の佐藤工事長は「交通の妨げにならないように努め、無事竣工を迎えたい」と展望する。
 宮前地区の橋梁基礎工事は2基残っており、今後工事発注する予定だ。




from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=171497
via 日刊建設工業新聞

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