2019年11月25日月曜日

【回転窓】地域に根差した名建築

京都・天王山山麓にたたずむ木造モダニズム建築の傑作「聴竹居」。建築家藤井厚二(1888~1938年)が自宅として設計し1928年に完成した▼日本の気候風土に合わせ自然の力を利用し、環境との共生を図るとともに日本人の生活様式に西洋的な空間構成を融合。窓や仕切りに円形のデザインを用いるなど、随所に昭和初期のモダンな雰囲気が感じられる▼藤井が竹中工務店に在籍していた縁で2000年に同社の有志が空き家になっていた聴竹居を実測調査した。土地と建物を16年に取得した後、地元住民と連携しながら維持管理し、見学会やイベントが開かれるように。17年には国の重要文化財に指定された▼聴竹居の保存・公開による建築文化の発信やイベントを通じた交流などは評価が高く、企業による芸術・文化を通じた社会創造活動を表彰するメセナアワード2019で大賞に選ばれた。地元の人々が地域に根差した建築の魅力を発見し、それを語り未来に引き継ぐ。こうした地道な活動が受賞につながったのだろう▼解体の危機に直面している名建築が各地にある。聴竹居の活動から学べることは多い。

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