2019年11月20日水曜日

【回転窓】人的資本のこれから

企業経営者がよく使う言葉に「人的資本」がある。人的資本を上手に活用できれば企業は発展できる▼ただ人を育てるにはコストがかかる。育成コストと生産性の向上などの関係を学術的に実証し「人的資本」という言葉で表したのが、ノーベル経済学賞を受賞した米国の経済学者ゲーリー・ベッカーだ▼ベッカーは金銭や経済問題だけを分析してきた従来の経済学の適用範囲を、広範で多様な人間行動・社会問題にも広げた。人々の思考や生活行動は経済的な損得ですべて説明できるとしたユニークな論文も発表している▼その人的資本の考え方も最近変わりつつある。企業が専門性の高い人材を育てる余裕がなくなり、優れた能力を持つ人材を中途採用するようになってきたからだ。高額報酬で声を掛けられれば、勤めている会社に義理を感じつつも、他社に転職してしまうのが今の世相だろう▼建設業界も他産業同様に人材の流動化が進む。人材獲得競争では資本力のある大手企業がどうしても有利になる。中堅・中小企業は人材流出をどう防げば良いのか。経営者には営業力や技術力とともに、真の経営力が求められている。

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