◇都、処理実態の把握急ぐ◇
建設現場などから発生する廃プラスチックの処理を巡る動きが慌ただしくなってきた。廃プラの受け入れ先だった中国や東南アジア各国が輸入規制を導入して以降、国内で行き場を失った廃プラの滞留が顕在化。産業廃棄物処理業界では受け入れ制限や処理費の値上げに踏み切るケースも増えてきた。主要な排出事業者となる建設業界にもその影響は徐々に表れている。他自治体に先行し、東京都が対応に乗りだした。
都は10月、産廃処理業者や排出事業者に向け、廃プラ処理の監視・指導を強化する通知を出した。廃プラを一般廃棄物に意図的に混入させるなど不適正処理の情報などが都に寄せられているという。
背景にはアジア各国の貿易政策の転換がある。最大の受け入れ国だった中国が2017年末に輸入禁止措置を講じたのを皮切りに、台湾、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシアも規制強化で同調。この1、2年で日本からの廃プラ輸出量は大幅に減少している。
今春、産廃処理業者で構成する「全国産業資源循環連合会」が会員企業を対象に実施したアンケートでも、廃プラが国内に滞留している実態が改めて浮き彫りとなった。18年度の受け入れ量が前年度に比べて増加したとの回答は4割に到達。既に受け入れを制限している企業は3割を超え、保管量も増加傾向。会員企業のうち4割は処理料金の引き上げに踏み切り、2割は値上げを検討中と答えた。
不適正処理の横行を懸念した都は、本年度に実態調査や排出事業者からの相談体制の構築に着手。10月には、じかに相談を受け付ける専門ホームページ(HP)を開設した。同月には都廃棄物審議会が「プラスチックの持続可能な利用に向けた施策のあり方について」の最終答申を都に提出。当面は産業用の原燃料として廃プラを有効利用する取り組みを拡大し、将来的に「新たな国内資源循環ルートの構築を図っていくべきだ」との方針が盛り込まれた。
審議会の委員で東京都産業資源循環協会の高橋俊美会長は「17年の暮れから廃プラ処理で大変な思いをしている。そのさなかの対応は素晴らしい」と評価。同じく委員を務める日本建設業連合会(日建連)の米谷秀子環境委員会建築副産物部会長は「汚れが付いた低品位のプラスチックごみを出している業界として(最終答申は)非常にありがたく、心強い」と歓迎の意を示した。
都は今夏、主要な関係団体や産廃処理業者を対象にヒアリングを実施。東京建設業協会(東建、飯塚恒生会長)の会員企業からは、処理費の値上げや受け入れ制限の実例も報告されている。一方、建設業界関係者からは「行政の動きは把握しているが、まだ様子見という感じだ」との本音も漏れる。処理コストの上昇は、まだ深刻なほどではないとの認識もある。ただ今後は「新たな国内資源循環ルートの構築」に向け、業界としての対応が求められてきそうだ。
都環境局の担当者は建設業界の実態をさらに深掘りする必要性も指摘する。「建設関係の廃プラで発生割合が大きい塩化ビニール管を扱う設備工事業界などもヒアリングする必要があるかもしれない」という。廃プラの受け入れを拡大しているセメント業界、廃プラ由来のRPF(廃棄物固形燃料)を利用する製鉄業界なども対象とする予定だ。担当者は「HPの内容は随時更新していく。排出事業者からの相談がわれわれの情報収集にもなる。ぜひ活用してほしい」と期待している。
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