◇円滑な交通でCO2削減
東日本高速道路会社が二酸化炭素(CO2)排出量の実質ゼロを目指し、「カーボンニュートラル推進戦略」を策定した。道路サービスによって生じる年間800トン超のCO2排出量のうち、9割以上が道路通行時や構造物の建設工事に起因。4車線化を推進したり、建設工事の調達段階でカーボンニュートラル(CN)に取り組む企業を加点評価したりして2050年までにCN達成を目指す。
東日本高速会社によると、環境省のガイドラインに基づいて算定した「サプライチェーン(供給網)排出量」は13年度が約892万トン。その後、電気や燃料の使用法を見直すなど排出量の削減に取り組んできた結果、22年度は約845万トンと13年度比で約5%の削減となった。
CN推進戦略は東日本高速道路グループの各社が取り組む。自社の事業活動によって排出された燃料由来のCO2量をスコープ1、事務所などの電気使用に起因する量をスコープ2に分類。排出量の大部分を占めるスコープ3は構造物の建設時などの上流部と高速道路を走行する自動車といった下流部で排出削減に取り組む。施策内容はCNの推進に向けた「緩和策」、気候変動が避けられない状況を想定した「適応策」の二つに分けた。
緩和策ではスコープ1~3をターゲットにした施策として七つの項目(エネルギー使用量の最小化、再生可能エネルギーの活用など)を設定する。
再エネ活用では約550カ所のSA、PAに太陽光発電設備を新設するとともに、バイオマスガス化発電の運用も始める考え。電気通信大学ら4者が開発した円筒形太陽電池を道路空間に設置するための実証実験を行う。東日本高速会社は同大学との包括連携を通じ、多種多様な箇所に設置可能な同電池の普及拡大につなげる。
トンネル内の照明をLEDに切り替えたり、建物をZEB化したりして電気使用量の削減に努める。高効率設備を採用した「eco事務所」に加え、遮熱塗装や複層ガラスサッシを使用した「ecoインター」を積極的に整備する。壁面緑化や温度上昇を抑えるため、歩道に保水性ブロックを施した休憩施設「ecoエリア」も設置する。
スコープ3の上流段階では、高速道路の建設や管理に必要な調達段階で脱炭素に向けた施策を展開する。CO2排出量を低減するコンクリート材料や中温化舗装といった新技術・新工法を採用しやすくするため、25年度中に技術基準の見直しに乗り出す。
現在、CNに取り組んだ施工会社を工事完了後に成績評定で加点する取り組みを試行的に行っている。東日本高速会社は試行結果を踏まえ、「総合評価方式のように入札段階でインセンティブを付与する」(技術本部)など現状よりも効果的な制度を検討する考え。CNに貢献できる提案内容として同社は、環境配慮型の建設機械や重機へのバイオ燃料活用などを挙げている。
下流段階では走行時でのCO2排出量削減を目指し、ミッシングリンクの解消や暫定2車線区間の4車線化を加速。スムーズな交通環境を実現する。環境に配慮した次世代自動車の普及を後押しするため、電気自動車(EV)急速充電器の高出力化や充電口数の大幅増設を計画する。
持続可能な高速道路の実現を目指し、防災・減災対策などの適応策も講じていく。特に気候変動に伴う豪雨災害により、甚大な被害を受ける道路インフラは少なくない。こうした状況を踏まえ、同社はICなどをかさ上げして浸水被害の軽減を図る。大規模な自然災害を想定し、自衛隊や消防、警察などの前線基地としてSAなどの休憩施設を活用する。
スコープ1、2の目標は中間に当たる30年度までにCO2排出量を13年度比で50%以上削減。50年度には実質ゼロを目指す=グラフ参照(報道発表資料から)。スコープ3は、国の地球温暖化対策計画で設定している目標(30年度までに13年度比で46%削減)の達成に向けて施策を推し進める。
CN推進戦略は社内組織の環境委員会が、サプライチェーンを通じた排出状況や施策の実施状況をモニタリングして取締役会に報告する。同社やグループ会社を取り巻く事業環境を把握し、状況に応じて戦略内容を見直す。
from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=167006
via 日刊建設工業新聞
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