2024年9月24日火曜日

スコープ/東日本高速東北支社、夜間工事で新入社員向けOJT

 ◇戸田建設施工の歩道橋撤去現場を見学
 高速道路は産業の発展やまちづくり、観光振興など幅広い分野に波及効果をもたらす。社会・経済活動に欠かせない重要なインフラの整備や維持管理は、技術系や事務系など広範な領域の人材がそれぞれの立場で役割を果たし、力を結集することで成り立っている。東北エリアを所管する東日本高速道路東北支社は、次代を担う人材の育成策として、福島県内で施工している老朽化対策工事で新入社員向けのOJTを実施。マニュアルや机上の研修だけではなかなか身に付かない知識やスキルを実践で補った。
 今春入社の若手社員を集めOJTを行ったのは、東北自動車道の国見IC~白石IC区間にあり、高速道路本線と国道4号をまたいでいる「狐壇(きつねだん)歩道橋」を撤去する工事。歩道橋を管理する宮城県白石市、国道を所管する国土交通省との連携が不可欠な上、昼夜連続した走行車線の交通規制や高速道路と国道の夜間通行止めも実施するなど、道路工事のさまざまな要素を凝縮したプロジェクトといえる。
 戸田建設が施工する「東北自動車道狐壇歩道橋撤去工事」を6月25日、7月30日の深夜に見学したのは、今春入社で配属先が福島管理事務所の木村愛華さん、門脇由歩さん、花田一秀さん、古賀浩輝さんの4人をはじめ東北支社管内で働く新入社員たち。工事は道路の直上で老朽化した長さ約55メートルの歩道橋を切断し撤去する。
 6~9月に計5回、高速道路と国道を夜間通行止めにして作業を実施。午後10時~午前6時という限られた時間で決められた工程を完了する必要があり、福島管理事務所の茅原佑樹所長は「全体をマネジメントするには丁寧な事前準備が重要になる」と話す。
 事前に決めた段取りを緊迫感が漂う深夜の現場で着実に消化していく工事関係者。普段は総務で働き、初めて夜間工事に立ち会った木村さんは「近隣にお住まいの方が家族連れで見学に来られるなど、関心の高さを知ることができた。今回の経験を生かし、より多くの人に高速道路の役割や事業の目的を伝えたい」と話した。
 現場では巨大な歩道橋を切断・撤去するため、道路上で大型のクレーンを組み立て、ベント設備と仮設桁を設置し作業を行った。仮設構造物を支える地面の耐力を十分に確保しつつ、万が一の地震に備えた対応も必要なため、作業前には地盤を入念に調査し地盤改良も行った。
 「クレーンで橋桁をつり上げ細かく調整しながら橋桁を設置する作業は緊張感があった」と話すのは管理部門に在籍する門脇さん。工事を間近で見て「安全対策の重要性を実感した」といい、「交通管理や道路管理の業務は社外の方と接する機会も多い。管理課が果たすべき役割をしっかり学びたい」と気持ちを新たにしていた。
 工事は上部工の撤去を終え、今後、橋台や橋脚など下部構造物を取り除く工程に移る。現場の指揮を執る戸田建設の高浜誠作業所長は工事の難所をクリアしたことに安堵(あんど)しつつ、今後を見据え「交通量が多い中で第三者災害、周辺への配慮を怠らず最後まで安全対策を徹底する」と気を引き締めていた。
 発注者と受注者という立場の違いはあっても、工務部門で技術者として歩み始めた花田さんにとって、高浜所長から学ぶことは少なくないはず。「打ち合わせや調整など万全の事前準備があってこそ安全に作業ができると実感した」と花田さん。「交通量の多い福島管内で経験を積み土木技術者として視野を広げたい」と前を向く。
 夜間工事の見学は施設部門で働く古賀さんにも貴重な経験で、「時間や工事進捗を逐一確認している点が印象的だった」そう。将来的には「工事の発注から竣工まですべての工程に関われるようになりたい。先輩の仕事を見て聞いてしっかり学び、挑戦する姿勢を持ち続けたい」と意気込んでいた。
 高速道路の工事は多くの関係者が連携して計画を練り上げ、緻密に工程を組み立て、安全を最優先にして作業を前に進めていく。沿線住民や道路利用者の理解と協力も欠かせない。東北エリアでは数多くの工事が各地で同時進行し、計画中の事業も多数ある。
 プロジェクトを支えるのは人。経験に裏打ちされた知識を若手にしっかりと伝え、実務を通じて成長を後押しすることは組織の将来にとっても極めて重要だろう。「社員全員が高速道路事業に社会的意義を感じ業務に当たる」(茅原所長)ためにも、OJTの充実は欠かせないといえる。




from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=167282
via 日刊建設工業新聞

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