2024年9月5日木曜日

スコープ/複合噴射攪拌協会、「リングジェット」「HCM」の2工法を広く普及へ 

 新しい深層混合処理工法の普及を目指して「複合噴射攪拌協会」(山崎淳一会長)が活動を本格化させている。機械撹拌(かくはん)と複合的な高圧噴射を併用することで、小型の機械で大口径の地盤改良ができる点が特徴。生産性向上や環境負荷の軽減も期待できる。発注者や建設コンサルタントらにPRし認知度を高めて、幅広い場面で貢献していく。
 扱うのは、円筒状の高強度改良体を形成する「リングジェット工法」と、撹拌翼を組み合わせて大口径改良体を効率よく造成する「HCM(ハイブリッド・コントロール・ミキシング)工法」。大口径での改良が増えているが、大型機械の使用が主流で施工場所などに制約がある。脱炭素社会への貢献も求められている。こうした課題を解決していく狙いだ。
 リングジェット工法は、セメントスラリー式小型地盤改良機で、改良径1800ミリで円筒状(リング状)の高強度改良体を構築する。撹拌翼端部の3カ所から下向きに高圧噴射する。円筒形状にすることで圧縮強度が高まり、支持力が30%増加する。曲げ剛性も2倍になる。既に軟弱地盤対策の現場に適用されている。
 断面全体を改良する従来のスラリー撹拌工法と比較して、造成量が減るのもポイントだ。改良径1600ミリの従来工法と比較すると、撹拌時間を40%削減し、固化材量を20%減らすことができる。セメント使用量や施工時間の短縮により、カーボンニュートラル(CN)にも寄与する。
 HCM工法は、固化材スラリーを噴射できる特殊ノズルと、より広い範囲でスラリーを噴射する撹拌翼を組み合わせた機械で施工する。短時間で改良体を構築できる。改良径1600ミリや、同2200~2400ミリに対応する。固化材スラリーを高圧で噴射するため、土塊が砕かれて均一に混合でき、品質が高まる。
 改良体の外周から1メートルの離隔で、地中変位は最大数ミリに抑えられ、周辺地盤への影響を低減できる。施工機械の運転に伴う単位改良土量当たりの二酸化炭素(CO2)排出量が最大50%程度削減できるとしている。
 両工法とも適用先には、盛り土の安定・沈下対策や構造物の支持力確保、橋台背面の側方移動防止対策などを見据える。
 リングジェット工法の模型実験などを支援した愛知工業大学の渡邉康司准教授は「合理的な施工が実現できる。さらに良い工法になることを期待している」と話す。カタログや技術積算資料を作成しており、積極的にPR活動を展開していく。

 □山崎淳一会長に聞く/高効率施工で強靱化と脱炭素に貢献□
 今後の展望について、山崎淳一会長(三信建設工業社長)に聞いた。
 --協会設立の狙いは。
 「今までなかった技術を広めていくことがメインの目的だ。機械撹拌では、大きな機械で大口径の改良体を深くまで造ることが主流になっている。しかし、日本は広いところばかりではない。施工条件を考えた時に、より小さな機械で施工できる工法の必要性が高い。課題解決に貢献したい」
 --リングジェット工法への取り組みは。
 「従来技術は円柱状で改良するが、リングジェットは外側を中心に円筒状にするのが特徴だ。同じ外形でも曲げ剛性を高めて、より少ない改良材で同様の支持力を確保する。結果的により小型な機械で施工ができる。技術資料や積算資料を作成済みで、設計の基本的な考え方もまとめた。第1号工事もできており、実績を積み上げていく」
 --HCM工法に対しては。
 「小型の機械でより大きな径の改良体を造る目標で開発した。外側に噴射することで、より大きな改良体を形成する。実大実験を行い、これまでの機械噴射と同等の性能や品質が得られることを確認済みだ。周囲の変位をかなり抑制できるのも特徴で、周りへの影響を抑えながら近接施工できる」
 --今後に向けては。
 「国土強靱化が求められている中で、より適応性の高い技術を提供していくことがわれわれの役目だ。セメント量を削減できるため、CNに大きく貢献できる。材料価格の上昇に対してもメリットがある。7月に第1回総会を開き、事業計画と予算が承認された。発注者や設計者に知ってもらうため、これから講習会を実施していきたい」
 「NETIS(新技術情報提供システム)への登録も目指す。スタートは二つの工法だが、新しい技術ができてくることも期待している。将来的に機械撹拌や高圧噴射と並ぶように複合噴射攪拌システムが発展できるよう取り組みたい」。




from トップニュース – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=166802
via 日刊建設工業新聞

0 comments :

コメントを投稿