◇復興の旗艦事業として早期実現へ◇
昨年9月の関東・東北豪雨による水害で市域の3分の1が浸水した茨城県常総市。市は地権者と民間企業と共同で、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)常総インターチェンジ(IC)周辺の農業を核とした開発「アグリサイエンスバレー構想」を進めている。水害の影響で手続きの一時停止や計画地の見直しなどを余儀なくされたが、市はこの開発を「水害からの復興の旗艦事業」に位置付け、構想の早期実現を目指す。
アグリサイエンスバレー構想では、「農業を活性化するための街づくり」を全国に先駆けて推進し、農産物の栽培・加工・販売までを行う「6次産業」を展開する。
組合施行の土地区画整理事業で農地を集約・大区画化し、施設園芸や支柱付き太陽光発電施設(施設下部で日影栽培を実施)などを行う「生産拠点エリア」と、同エリアの農産物を加工・製造・販売・流通させるため物流・産業系の企業を誘致する「都市的利用エリア」をそれぞれ整備する。
計画地は、本年度に開通予定の圏央道常総IC周辺の45ヘクタールの敷地。このうち、生産拠点エリアに14ヘクタール、都市的利用エリアに31ヘクタールを充てる。現在は全域が水田で農振農用地区域に指定されているため、開発に当たっては市街化区域への編入が必要で、県と関東農政局が区域変更に向けた調整を進めている。
13年度に市が策定した「常総市圏央道(仮称)水海道インターチェンジ周辺地域事業計画書」では、計画地を62ヘクタールとしていたが、水害後に一部の地権者が「構想の実現には賛成だが、自分の土地は水田としてそのまま所有し続けたい」と現状維持を望む要望書を市に提出。市はこれを反映させて対象区域を縮小した。
開発には業務代行者として戸田建設が参画。市と同社、地権者で組織する「常総市圏央道常総インターチェンジ周辺地域整備事業推進協議会」の3者が15年6月30日付で開発の推進に向けた基本協定を締結した。戸田建設は地権者からの要望があれば、温室栽培の施設整備など同社が研究を進める技術も導入するという。
当初は、土地区画整理事業の着工時期を今年10月としていたが、水害によって計画地全体、さらに地権者の家屋も被災したため、水害からの半年間、開発に向けた議論や手続きが停止。その後、計画地の見直しなどもあり、スケジュールは後ろ倒しとなった。
現状では、17年初めに都市計画変更を申請し、同年末までに決定したい考え。18年初めの区画整理事業の事業認可を経て、推進協議会を土地区画整理事業組合に移行。同年9月ごろの着工、21年末の竣工を目指す。
事業費は当初40億円を見込んでいたが、計画地の見直しによって60億円程度に膨らむ見通し。事業費のうち市の負担額は5億円となる。
水害によって一時は足踏み状態になったが、アグリサイエンスバレー構想は、今年3月にまとめられた「常総市復興計画」の中に、市の誇りを取り戻す復興の柱の一つとして盛り込まれた。市は、「水害後、立ち止まらずに開発を進めてほしいという市民の陳情をもらっている」(常総市担当者)とし、開発によって農業の新拠点を早期に完成させ、水害からの復興に道筋を付けたい考えだ。
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