関東地方整備局荒川下流河川事務所は近隣の学校などを対象に、洪水対応を題材にした職業体験プログラムを展開する方向で検討を進めている。
同事務所の新人職員になってもらい、洪水対応や地域への避難周知などを訓練してもらう内容。子ども向け職業・社会体験施設「キッザニア」と連携して企画・立案したイベントが好評だったことから、ノウハウを生かしていく。水防災や避難の重要性などへの理解を深めてもらう狙いだ。
同事務所は、10月28日に「アウト・オブ・キッザニア 洪水から街を守る仕事体験in荒川」を、東京都北区の同事務所内で行った=写真。大雨で荒川の水位が上昇した事態を想定し、水門の閉鎖や地方自治体への連絡、水防団への出動要請などを実際に利用している災害対策室で体験してもらった。
荒川の水害対策の歴史、水害時の行動計画「マイ・タイムライン」を作成する研修も行った。1回90分の構成で3回のプログラムを実施。小学3年から中学3年まで計74人が参加した。
子どもへのアンケートでは「とても楽しかった・楽しかった」(99%)が大多数を占めた。大雨や台風の際にとるべき行動についても「よく分かった」(78%)と「少し分かった」(18%)が多かった。自由意見では「ほかの仕事も体験してみたい」「マイクを使って発表したのが楽しかった」「台風が来た時、どのように動くかがよく分かった」などの声が寄せられた。
保護者からも「こどもの真剣な姿が見られた」「国や自治体の危機管理業務によって守られていることを学べたのは、子どもにとって新たな気付きがあったと思う」「最初(イベント前)は地味な印象だったが、生活に密着した仕事を知るのもとても大事だと思う」と好意的な意見が多かった。
同事務所は、キッザニアを運営するKCJ GROUP(東京都中央区、住谷栄之資社長兼最高経営責任者〈CEO〉)の協力を得て、プログラム内容や子どもへの説明方法などを詰めた。同社が中央官庁と連携するのはこれが初めて。募集開始から1週間程度で定員に至っており、同社は「キッザニアの中では絶対に体験できない。思った以上に関心が高い」(ブランディング部広報グループ)との認識だ。
国土交通省は、15年に発生した関東・東北豪雨での鬼怒川堤防決壊を契機に、水防災意識社会の再構築に取り組んでいる。その一環として同事務所は近隣学校などに呼び掛け、地元の児童向けに同プログラムを実施することを視野に入れて意識啓発を図っていく考え。
□洪水への対応、より良い伝え方を模索□
豪雨災害が頻発する中でどのような意識で洪水対応の周知に取り組んでいるのか、関東地方整備局荒川下流河川事務所の荒川泰二所長に聞いた。
--取り組みの狙いを。
「洪水時の河川管理者の対応はなかなか表に出てこない。治水施設の役割や地方自治体への情報提供などに焦点を当てて職業体験してもらうことで、見に来た親御さんを含めて理解してもらいたいと考えた。『台風時には河川の水位などを見なければいけない』という程度でも、印象に残っていればうれしい。水害に対して何をしなければいけないかを、体に染み込ませることが大切だ」
--キッザニアと連携した感想は。
「子どもたちの立場に立ったインパクトの与え方などが、大変勉強になった。私たちがイベントをやると小学生は小学生として扱うが、同社には、子ども扱いしないことが肝になると言われた。新人職員として作業を頼むことによって、受け身でなくなり、より意識が高まった。仕事の重要性も認識してくれた」
--今後の活動をどう考える。
「2018年7月豪雨などを受けて、防災教育がより重要視されている。近隣の学校などに声を掛けて、19年度以降もこの取り組みを続けていきたい。人気になっているところには学ぶべき部分がたくさんある。自分たちが考える以上の最良の伝え方が、まだまだあると感じた。今回の経験をいろいろな事業を説明する際にも役立てていきたい」。
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