2018年12月27日木曜日

【回転窓】観光立国の憂い

年末年始は帰省や旅行などに出掛ける方も多かろう。鉄道や飛行機、自動車などの利用が集中し例年のことながら大変な混雑や渋滞が予想される▼利用者サービスの一環で、交通機関の事業者側が輸送能力増強に向けた投資を行えばいいかと言えば、ことはそれほど簡単に進まない。一時的に急増した旅客数が元に戻れば採算性が低下し、過剰投資が事業継続に重くのし掛かる▼インバウンド(訪日外国人旅行者)が急増する地方などの観光地では「オーバーツーリズム」が問題になりつつある。過剰な混雑が観光施設の受け入れ能力を超過するだけでなく、渋滞悪化やごみの増大など、地域住民の日常生活にも悪影響を及ぼす事態が起こっているという▼インフラ分野でもトイレ増設に伴う下水道整備や道路の拡幅・拡充などでコストが膨らむ。観光客の増加で地域が得られる利益以上に負担や損失が大きくなっては、国策のインバウンド戦略も本末転倒だ▼来年以降、ラグビーワールドカップや東京五輪、大阪万博など、世界各国から人々が集まるイベントがめじろ押し。オーバーツーリズムへの早急な対応が必要ではないか。

1 件のコメント :

  1. コスト側の議論としては正しいし、過剰観光問題への問題提起もおっしゃる通りです。但しインバウンド客受入を国家ビジネスとして捉えるためには、輸出産業としてどの程度の恩恵があるかの議論と照らし合わせるほうが全体観把握後のより正確な判断につながると思います。昨年度は外貨獲得効果(インバウンド客の日本国内観光支出総額)が4兆5千億程度だったので、2018年は5兆程度は行くでしょう。自動車以外の輸出産業の相対的国際競争力低下で外貨獲得産業の先行きが陰る状況で、2020年には8兆円外貨獲得を目指す有望な経済活動分野です。2点提起させて頂ければ幸甚です。(1)過剰観光問題:人口160万人のバルセロナに1800万人が押寄せて問題が顕在化したバルセロナ、ヴェニスもアムステルダムも似たような問題です。では人口130万人の米国フロリダ州オーランドに観光客7100万人が来訪しても過剰観光問題が一切発生しないのは何故か?欧州諸都市よりも米国地方自治体が観光政策で優れている点は、観光産業育成の自主財源確保による観光関連財政持続可能性確保の点です。過剰観光問題は欧州の問題であり、基本は財源問題が根本問題です。地方特別税制度を検討し、自主財源を確保して観光計画を策定すれば過剰観光問題は米国のように軽減してより産業育成、地方創生が可能です。(2)日本国内需依存産業の経営意識転換問題:少子化高齢化で長期トレンドが縮小傾向の内需依存産業群(建設・輸送・小売、飲食等)は今まで外貨獲得で自社増収増益という意識はほぼ無かったはずです。しかし、インバウンド受入は、これまで日本人相手で先細りの内需依存業界に他にありえない機会を提供しつつあります。宿泊施設だけでなく、道路や鉄道、飲食業に至るまで、地方までインバウンド受入で外貨獲得による自助努力による地方創生が可能になっています。しかし、戦後数十年日本語だけ話して日本人相手の仕事をしてきた企業、特に「日本」とか「Japan」という名前の付くような企業は、今まさに日本国内に居ながらにして国富増大に貢献出来て自社の収益確保にも資するインバウンド関連業務機会に「英語わからない」というレベルで対応経営戦略を打ち出していないように見えます。建設、輸送、運輸あたりには相当の増収増益機会がありますが、きちんと気づいた経営者がその分を余計に享受できるというシナリオになると思います。

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