日本のものづくりの記憶を今に伝える愛知県常滑市の施設が、3年にわたる保全工事を終え4日、リニューアルオープンする。
1921(大正10)~71(昭和46)年に土管や焼酎瓶、タイルなどを製造していた工場。木造トラスを鉄骨で耐震補強するとともに、屋根瓦を土ぶきから桟ぶきに変えて軽量化するなど、次の100年を見据えた造りになっている。
現在、工場は「窯のある広場・資料館」の名称でLIXILが運営している。建屋は2階建てで延べ床面積は512平方メートル。1986年から文化施設として公開している。1997年に国の登録有形文化財、2007年には経済産業省の近代化産業遺産に認定された。
保全工事では資料館のシンボルである高さ22メートルの煙突の免震化も行った。表面のれんがに番号を付けてすべて取り外し、中心にある煙突をRC造で構築。その後、番号を手がかりにれんがを元の位置に戻した。手間の掛かる作業だが、現在の姿を後世に残すには必要だった。
同じくれんが造りの窯は一度解体して補強するのは難しいと判断。窯内の半分を鉄骨シェルターで覆い、見学者が入れるようにした。シェルターで覆われていない部分は劣化を遅らせる薬剤を塗った。リニューアルオープン後は炎の映像などを投影し、窯だきの様子を再現する。
外壁は交換した。もともとあったコールタール独特の風合いを演出するため、ウオータージェットで長年使い込んだように加工。その後厳選した天然素材で着色し、防腐処理を加えた。
資料館のある常滑は、知多半島の豊富な粘土を生かし平安時代末期には既に焼き物の産地だったという。明治期になると土管や焼酎瓶、タイルの生産が始まり急速に発展した。資料館は工場としての操業を停止後、伊奈製陶(後のINAX)が倉庫として借りていた。
資料館には土管製造が最盛期を迎えた昭和30年代の活気を伝える写真を常設展示するほか、明治から昭和にかけて常滑の土管づくりの歴史が分かる資料を並べた「常滑ライブラリー」などを設けている。
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