2019年10月7日月曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・237

仕事と家庭の両立は長いスパンで見る必要がある
◇仲間への感謝忘れず、今後も前に◇

 準大手の建設コンサルタント会社に勤める女性技術者の上嶋釉さん(仮名)は、20代で大病を患った。病名はくも膜下出血。闘病生活は大変だったが奮起し、職場に復帰して技術士の資格を取得した。出産と育児が一段落した今年の春、今度は親の介護という難問と向き合うことになった。現場での仕事にやりがいを感じていた上嶋さん。仕事と家庭をどう両立していくのか。自分だからこそできることを模索している。

 河川の環境調査や護岸の整備計画など水関連が専門の分野。入社1年目は上司から指示された通りに作業をするので精いっぱいだった。2年目に携わった魚道整備のプロジェクトを通じて、仕事にやりがいを感じるようになった。建設コンサルタントは労働時間がどうしても長くなり、深夜残業を終えてから同僚と食事をすることもしばしば。翌朝そのまま出張に行くこともあったが、気にならなかった。

 25歳の冬、仕事中に突然激しい頭痛に襲われた。異変に気付いた上司がすぐに救急車を呼んでくれ、病院に運ばれた。診断結果はくも膜下出血。手術後のリハビリで3カ月休むことになった。仕事を続けたい一心で、病気療養の期間を技術士取得の勉強に充てた。右手に軽いしびれは残ったが仕事に無事復帰。技術士も3度目の挑戦で取得できた。

 縁あって入社5年目の秋に結婚し、半年ほどして子どもを身ごもった。やっと仕事を任せてもらえるようになったところでの出産と育児。同じ部署に育児と仕事を両立している女性の先輩はおらず、復帰後はすべてが手探りの連続だった。

 退職せずに済んだのは技術士への誇り、そして上司と仲間の協力だった。1年後には同僚の妊娠が分かり、グループ全体で助け合う体制を整えた。この時の経験から、後輩には「技術士の資格は早く取得する方がいいが、仕事は長いスパンでできる。子どもが欲しいなら、その望みは早くかなえた方がいい」と伝えている。

 娘さんが中学校に入学して少しだけ時間に余裕が持てるようになった。仕事に打ち込めると思ったら、今度は親の介護という難問に直面した。同居している母親が脳梗塞で倒れ、要介護3と認定された。上嶋さんは会社の介護休暇をすぐに使い切ってしまった。

 「この先、いつまでこの状態が続くのだろう」。育児では感じなかった不安に襲われた。そんな上嶋さんを支えてくれたのは、今度も職場の仲間だった。

 上嶋さんは同僚や顧客に家庭の事情を伝え「終業時間の午後5時半以降は残業できない」と話した。仕事の量を調整し、何とか介護との両立をしている。

 出産と育児、介護を同時に行う「ダブルケア」。病気、出産・育児、介護を体験する自分だからこそ、社内でできることがあるはず。仲間への感謝を忘れず、これからも一歩一歩前に進んでいく。

0 comments :

コメントを投稿