2020年2月18日火曜日

【自由自在に加工が可能】東芝ホクト電子(北海道)、透明フィルムLED開発

 東芝のグループ会社で電子部品メーカーの東芝ホクト電子(北海道旭川市、村川典男社長)が、透明なフィルム状のLEDモジュールを開発した。

 薄いフィルム状の素材にLEDチップを挟み込んだ構造で、誘導灯や表示灯としてサインが表示できる。LEDを消せば存在感がなくなるため、ガラスなどに設置しても後ろ側の空間や街の風景などを邪魔しない。イルミネーションや店舗装飾などでより自由度の高い演出が可能となる。

 開発した「透明フィルムLED」は、透明なプラスチックフィルムに微細配線電極とLEDを配置して挟んだサンドイッチ構造のモジュール。プリント基板に固定していた従来型のLEDモジュールと異なり、はんだなどを用いずに透明の素材だけで構成している。全方位に光が届き視認性を確保し、80%超という高い透過率を実現した。LED消灯時に電極の配線とLEDチップが目立たず背景がそのまま見える。

 □プログラミングで模様も 多彩な演出が可能□


 省エネ性にもこだわり、消費電力はパッケージLEDの15~30%程度で済むという。厚さ0・36ミリのフィルムを用いることで、薄くて柔軟性の高い製品を実現した。自由に曲がるフィルムの性質を生かし、立体的な光が演出できるのも特長だ。窓ガラスや壁などの平面の電飾以外にも曲面へ展開できる。「透明」にこだわることで、明るさと柔軟性、視認性をバランス良く兼ね備えることができたという。光量や耐久性の面も含めて、他社製品との差別化を図っている。

 東芝ホクト電子は、1945年に東芝の旭川工場として創業したのがルーツ。創業当初は一般照明用電球を製造していた。近年、市場では透過型有機ELディスプレーや透過型液晶ディスプレー(LCD)など透明なデバイスの人気が高まっている。そうした中で同社は保有技術を生かしたオリジナリティーのある光デバイスを作ろうと、透明フィルムLEDの開発に乗り出した。

 「量産性を考えた上で品質を保つ設計に苦労した」と話すのは、開発を主導した透明フィルムLED事業推進部の曽我部寿氏。シンプルな構造だが、柔らかいフィルムに電極を固定したり配線を見えにくくしたりするため、高度な技術が要求された。同社は現在、バーコードラベルの印刷や医療用印刷装置に使われる「サーマルプリントヘッド」、直流電力をマイクロ波に変換する装置「マグネトロン」、車載機器や医療装置などに使われる薄くて柔軟性がある「フレキシブルプリント配線板」などの製造が主力事業。各製品に導入されている高度な実装技術やノウハウを駆使して透明フィルムLEDの開発に当たった。

 一般的なフィルムは屋外環境に長期間置くと黄色く変色してしまう。製品の開発ではフィルムの変色をどう抑えるかも課題だった。試作を何度も繰り返し、素材や接続技術などを吟味。高度な実装技術を駆使することで、品質を確保しつつ量産できる体制も構築できた。透明フィルムLED事業推進部の松下孝一氏は「他にない光デバイス」と製品の出来栄えに胸を張る。

 柔軟で自由自在に曲がるという特徴を最大限に生かせば、さまざまな分野での応用が期待できる。表示するサインなどは、LEDチップを任意に配置して光らせる方法と、マス状に配置させプログラミングで模様の内容を決める方法があり表現の自由度は非常に高い。誘導灯や案内板、ショーウインドーなど幅広い展開が見込めると同社は見る。

 ショーウインドーの場合、集客時にLEDを光らせて商品を目立たせ、中の商品を見せたい時はLEDを消して透明フィルムに戻す。こうした目的に合わせた演出も可能になる。タンブラーなどに実装すればムードを盛り上げるグッズにもなる。全方位に光が広がるため、煙の中でも認識しやすく、非常用誘導サインにも適しているとしている。

 □形状、大きさ自由自在□


 フィルムは最大で400~500ミリ角まで拡大できる。複数のフィルムをつなぎ合わせれば大きなディスプレーとして使用することも可能だ。フィルム状で軽く、天井につるす際の施工も容易。万が一落下した場合もけがなどの心配が少ない。

 時代とともに街や建物が新しくなっていく中で、景観とより調和し風景に溶け込むような新しいサインの在り方が求められている。曽我部氏(写真㊧)は個人的な見解としつつ、「景観がきれいだと心も落ち着く。街中にこの製品があふれればきれいな見栄えになるはず」と話す。「パフォーマンスが最大限生かせる使い方をユーザーと共に考え、世の中にないものを創っていきたい」とも。

 「サンプルを試してもらっている。ユーザーの生の声を聞きながら、市場への広げ方や売り上げ目標など固めていく」と松下氏。透明フィルムLEDを街中で見掛ける日が来るのも、そう遠くないかもしれない。

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