言葉の組み合わせでがらりとイメージが変わることがある。例えば「緑のダム」。環境保全の代名詞のように使われる緑(森林)が、従来のダム機能を代替できるのであれば、こんな良い話はない▼熊本県の川辺川ダム建設の賛否を巡って起きた「緑のダム論争」。ダム反対派は森林が雨水を浸透させ河川のピーク流量を低減するため、人工林の間伐など森林を手入れすればダムによる洪水緩和機能は不要と主張した▼一方、推進派は手入れをしても洪水緩和機能は得られないとした。県は2004年から2年間をかけて森林の持つ保水機能を検証。その結果、手入れをしても保水力に大きな変化がないと確認した▼そもそも森林の保水力は地面の表層だけ。ただ土砂流出の抑止や清浄な水の確保などの機能があり、治水と利水には欠かせない存在でもある。要は森林とダムは競合関係ではなく、相互補完関係にあるということだ▼なぜこんな論争が起きたのか。本日付の本紙最終面で紹介している『ダムと緑のダム』(日経BP刊)が詳しい。背景には後手に回った国内の森林政策にも一因があったのかもしれない。ぜひご一読を。
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