2020年9月11日金曜日

【複合アリーナとして2024年春復活へ】横浜文化体育館、58年の歴史に幕

6日に閉館した現在の文体。50年以上にわたって親しまれた

  「ハマの文体(ぶんたい)」の愛称で長年市民から親しまれた横浜文化体育館(横浜市中区不老町2の7)が6日に閉館し、58年の歴史に幕を下ろした。1964年の東京五輪バレーボール競技やプロボクシング世界タイトルマッチなど数々のビッグイベントの会場になり、地域スポーツ大会などにも対応する使い勝手の良い施設だった。解体後はアリーナやホテルなどの集客施設を併設する複合スポーツ施設に生まれ変わる。新施設は2024年4月のオープンを予定している。

 文体は1962年5月、横浜港開港100年の記念事業の一環として落成した。実業家で衆院議員や横浜市長も務め、「市民スポーツの父」と呼ばれた平沼亮三(1879~1959年)の功績をたたえ、平沼記念レストハウスが併設されている。設計は久米建築事務所(現久米設計)、施工者は大林組。

 施設はRC造3階建て。本館は40メートル×48メートル、広さ1920平方メートル、高さ13メートル。観客席は2階1723席、3階504席(アリーナを含めると約5000席)の規模。併設する平沼記念レストハウスには特別会議室、1~4号会議室などを備えていた。JR京浜東北根岸線関内駅南口からも近く、周辺には横浜スタジアム、元町・中華街、伊勢佐木町などの集客スポットも多い。施設は市が所有し、横浜市スポーツ協会・ミズノ共同事業体が運営・管理を担当していた。

 開館当時は最新鋭の設備と最大級の広さに加え、舞台を備える特徴的な体育館として全国から注目を集めたという。

 昭和の雰囲気を漂わせるたたずまいにはファンも多く、存続を求める声もあったが、老朽化が進んだことや横浜市に武道専用のスポーツ施設がなかったこと、市庁舎移転に伴う関内・関外地区の活性化が急務となったことなどの複合的要因から、再整備の計画が浮上した。

 再整備では文体の敷地(面積1万1014平方メートル)と隣接する旧横浜総合高校跡地(中区翁町2の9の10、面積8280平方メートル)の2カ所の市有地を使い、メインとサブの二つのアリーナを備えた体育施設をBTO(建設・移管・運営)方式のPFIで整備・運営する。併せて民間収益施設の整備・運営事業を民間事業者の独立採算で実施する。

 事業者選定では2017年8月、一般競争入札(WTO対象、総合評価方式)でフジタら10者が出資する特別目的会社(SPC)のYOKOHAMA文体が落札している。落札金額は313億3000万円(税込み)。代表企業はフジタ。構成員は電通、梓設計、大成建設、馬淵建設、渡辺組、川本工業、横浜市体育協会、日本管財、スターツコーポレーション。協力会社としてアーキボックス、ハリマビステム、電通東日本、テレビ神奈川、神奈川新聞社、横浜エフエム放送、ディー・エヌ・エー、横浜アリーナ。その他企業として日本海員掖済会が参画する。スターツコーポレーションはホテル、飲食店などを整備運営、日本海員掖済会は病院を整備・運営する。

 文体再整備は関内周辺地区街づくりのリーディングプロジェクトに位置付けられている。計画によると文体敷地に建設するメインアリーナはRC一部S造3階建て延べ1万5514平方メートル。民間収益施設はS造7階建て延べ4158平方メートルの規模でホテル、飲食店、店舗、駐車場が入る。10月にも解体に着手し、24年4月の供用開始を予定している。

新施設の完成イメージ
(提供:梓設計・アーキボックス・大成建設設計共同企業体)

 先行するサブアリーナは市の公共施設で初めて本格的な武道場を備えた施設「横浜武道館」として7月24日に完成・オープンを迎えている。規模はRC一部S・SRC造4階建て延べ1万4981平方メートル。1階が武道場・多目的室、2階はアリーナ、3階が本部室でラウンジを4階に配置している。観覧席数はアリーナ約3000席、武道場約500席。サブアリーナの民間収益施設はS造7階建て延べ2577平方メートルの病院で、現在建設中。

 関内周辺地区では旧市庁舎街区で三井不動産を代表に8社で構成する企業コンソーシアム「KANNAI8」が、地下1階地上34階塔屋2階建てのタワー棟と2階建てのライブ・ビューイング・アリーナ棟で構成する、延べ約13万1000平方メートルの複合施設の建設を計画。25年内の供用開始を目指す。旧市庁舎街区に隣接する「関内駅前港町地区」では三菱地所を代表とする5社グループが31階建て延べ約8・9万平方メートルの複合ビルの建設を計画、こちらは29年度の竣工を目指している。

 先行する文体再整備プロジェクトが引っ張る形で関内駅周辺地区の新たな街づくりが進んでいる。

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