大手デベロッパーらが主導する開発事業で、計画を見直す動きが顕在化してきた。新型コロナウイルスの流行で働き方や住まい方が変化しつつあり、街づくりのニーズも今後変わっていく可能性がある。大手デベ各社は施設に導入する設備や機能、事業全体の用途配分の検討に腐心している。
不動産協会(不動協)の菰田正信理事長は「アフターコロナでどうなるのかを見据えて、(事業計画を)見直すケースが出てきていると思う」と現状を分析する。新型コロナが収束したとしても、「別のウイルスなどが5年、10年後にまた出てくる可能性は否定できない」と指摘。コロナ禍と同様の事態を見据え、建設するビルに強力な換気設備、非接触でエレベーターやエントランスに入場できるシステムなどの導入を「各社考えている」状況という。施設の造り込みによって「工期が伸びる事例も出てくる」との考えも示した。
ビル1棟の建設にとどまらない複合開発も「どの用途にウエートを置くか」(菰田理事長)再検討する事例が出ている。アフターコロナの街づくりで重要な役割を期待される用途の一つとして挙がっているのが屋外空間だ。
三菱地所はJR東京駅前で進める複合開発プロジェクト「TOKYO TORCH(トウキョウトーチ)」の計画概要を17日発表した。地上レベルに約7000平方メートルの広場などを整備する計画。プロジェクト全体で設ける屋外空間は約2ヘクタールに達する。
当初計画で屋外空間の広さは約1・2ヘクタールだったという。同日、東京都内で会見した三菱地所の茅野静仁執行役員常盤橋開発部長は「コロナ禍もあり外での活動がより重要になっていくと再認識した」と経緯を説明。2027年度竣工予定の超高層ビル「Torch Tower(トーチタワー)」に設ける約2500平方メートルの屋上庭園などを「新型コロナ発生後、計画に追加した」と明らかにした。開放的で広大な屋外空間を確保し、仕事の場などとして活用してもらう考えだ。
東京都内で再開発事業を計画するある準備組合は、関係権利者にアンケートを実施した。「新型コロナを受け特に増やした方がいいと思う機能」を質問したところ、最も多かった回答は広場や空地だった。準備組合事務局は「小さい公園だと『密』になりがち。子どもたちが気兼ねなく遊べる大規模な空間を求めているのではないか」と結果を分析している。
新型コロナの収束は先が見えない状況にある。社会・経済活動に与える影響は大きく、都市開発など建設関連プロジェクトも今後の動向はつかみにくい。安心して過ごせる空間をどう造り上げていくか-。ニューノーマル(新常態)に対応した街の在り方が問われている。
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