東京の名所から外国人観光客の姿が消えた |
◇受け入れ再開へ模索、国内観光のてこ入れも◇
インバウンド(訪日外国人旅行者)は復活するか-。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は観光産業に大打撃を与えた。世界中で人々の往来が途絶え、年3000万人を超えた日本国内のインバウンド需要は一気に消滅。ただ、観光分野の専門家や宿泊事業者からは先行きを楽観視する意見も。ウィズコロナの視点でインバウンドの受け入れ態勢を整える道筋を探っている。
「インバウンドは復活する。そのように皆さんの意見は一致している」。東京都庁で9日に開かれた観光振興に関する都の有識者会議。元観光庁長官で国連世界観光機関(UNWTO)駐日事務所代表の本保芳明氏はそう強調し、インバウンドを再び迎え入れるための態勢を準備し、国際的なプロモーションを継続するよう訴えた。
国を挙げてインバウンド振興に注力する中で「国内観光には無かった革新の手段を得てきた」と本保氏は指摘する。デジタルマーケティングや滞在型観光のノウハウを生かし、国内観光を活性化させる短期的な戦略を描く。
本保氏はインバウンドの熱狂がいったん落ち着いた今だからこそ、「地域、住民に寄り添った持続可能な観光」を目指すべきだと提言。「もはや成長一辺倒の政策はあり得ない。エビデンスベースの観光地経営やSDGs(持続可能な開発目標)への貢献が政策要素に入っていなければ次の展開にはつながらない」と今後を展望した。
国内観光のポテンシャルを生かし切れていないという認識は、多くの識者に共通している。小西美術工芸社社長のデービッド・アトキンソン氏も「インフラ整備で観光地はどんどんレベルアップしているにもかかわらず、日本人はそれを認知していない」と国内観光向けの情報発信の弱さを嘆く。
一方、宿泊事業者はどう見ているか。星野リゾート代表の星野佳路氏は、当面は国内観光にシフトしたとしても「来年にはインバウンドが戻り始める」と予測。森トラスト社長の伊達美和子氏は「インバウンドは不況のたびに必ずV字回復してきた。(新型コロナで)ニーズそのものが無くなったわけではない」との見方を示した。
ただ乗り越えるべき課題も多い。コロナ禍で表面化した不当な差別や偏見が、インバウンド復活の足かせになることを星野氏は懸念。「『外国人お断り』が出てきてはいけない。偏見を持たない受け入れ態勢を業界が徹底することが大切だ」と強調した。
星野氏はホテル内の感染対策を宿泊客が評価できる仕組みの導入も提言した。宿泊客のチェックにさらされることで感染対策を日々進化させられるという。伊達氏は宿泊客だけでなく「従業員も守らないといけない」と訴え、都に「安全・安心に向けたプロモーションをしてほしい」と要望した。
現状のホテル経営は綱渡り状態で、雇用調整助成金の特例措置やGo Toトラベル事業に頼っている面がある。星野氏は国内観光の需要創出に向けたイベント解禁などを都に要請。伊達氏は、飲食店などのテラス利用を促進する都の助成制度に言及し「公開空地やピロティの利用に自由度がほしい」と注文した。
有識者会議に出席した小池百合子知事は「観光事業者の感染防止対策の支援、安心して旅行できる環境整備に取り組む」と表明。「観光産業が元気になれば、経済活性化や雇用創出で東京の成長をけん引するものとなる。東京の稼ぐ力に磨きをかけるためにも新型コロナ対策をしっかりやる」と決意を述べた。
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