2020年12月14日月曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・274

基礎自治体や事業者との調整作業は重要だ

 ◇今度は背中を見るだけでなく◇ 

 3回も一緒に仕事をすることになるとは-。松井修也さんと、先輩の鈴木拓さん(いずれも仮名)は15年以上、広域自治体の事務系職員として苦楽を共にしてきた。今は関連団体に出向し、市町村の連絡調整や人事交流に携わっている。担当する自治体は土木や建築の職員が不足しているケースが多く、交流してノウハウを共有することが「喫緊の課題」と捉えている。

 2人は部長と次長という立場。鈴木さんは松井さんを「とにかくエネルギーがすごい人」、松井さんは鈴木さんを「3手4手先を読んで調整できる。僕とは対照的」と評価する。

 知り合ったのは入庁6年目の松井さんが厚生関係の部署から市町村課に異動した時。税制を市町村の担当者に説明する業務を行っていた。自分では一生懸命取り組んでいるつもりだったが、どうも空回りしてしまう。なかなか理解してもらえず苦悩は深まるばかりだった。

 そんな松井さんを見かねて飲みに誘ったのが同じ課で働く鈴木さん。「配属当初は多分君より失敗していた」「自分を『翻訳者』と割り切ればいい」と松井さんを励ました。

 翻訳するには相手の言葉を知らなければいけない。松井さんは中小事業者の声を聞きたいと思った。鈴木さんに知り合いの商店経営者を紹介してもらって話を聞き、情報を頭に入れて自治体担当者に説明するようにした。熱意は人一倍の松井さん。膝を詰めて説明を重ねる中で「分かってもらえるようになった」という。

 市町村課の後、防災関連の部署を経て異動した広報課でも鈴木さんが上司だった。報道対応では、取材の翌日にテレビを見たり新聞を読んだりするたび、意図とは違う報じられ方をする場面が出てくる。「僕たちがどういう情報を出したいかより、『自分が記者だったら』と考えてみればいい」と話す鈴木さん。まだまだ学ぶことは多いと感じた。

 広報を2年務めた後、松井さんは行政改革を担当した。新しく就任した知事が公共事業の入札制度改正に取り組んでおり、注目度の高い部署だった。

 知事の思いは伝わってきたが、ヒアリングでは中小企業の担当者から「人気取りに終始し、現場を見ていない」と批判の声が相次いだ。自分に何ができるかと、頭を抱える日々。思い出したのが鈴木さんの言葉だ。「翻訳者だと割り切る」「自分が業者だったら」と考えて、知事や幹部が何を意図しているのか、かみ砕いて説明した。

 そんな日々を2年過ごした後、現在の関連団体に出向した。鈴木さんも先に異動していた。「今度は背中を見ているだけではダメだな」。良き先輩を手本にして「僕にしかできないことを探したい」と決意を新たにしている。

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