実家のある石川県の高等専門学校で建築を学んでいたころ、阪神・淡路大震災があった。早朝の揺れで目は覚めたが、まさか大惨事になるとは思いもしなかった。しばらくしてテレビをつけた時、目に飛び込んできた神戸の街。「その光景が忘れられない」と話す。以来、構造分野に意識的に取り組むようになった。
高専と大学では地盤や建物の振動解析を一貫して研究。設計事務所に就職し構造設計に9年携わった。結婚と出産を経て生活環境が変わった時期に転職を決意。以前と違う形でも「地震と建物に関わる仕事は続ける」と心に決めていた。
入庁して間もなく担当した都庁舎の長周期地震動対策が印象に残っている。有識者会議で約3年調査・検討し、2011年に対策内容をまとめた。段階的な改修工事は今も進む。庁舎内のフロアに設置された制振装置を感慨深く見つめる。
現在は都営住宅の耐震化を担当。低層階に併設する保育所や店舗と調整しながら、耐震化をいかに実現できるかが腕の見せどころ。設計実務と求められる役割は異なるが、都民の安全を守るため奮闘している。
2人の子どもを育てながら仕事を続けてきたこつは「今できることをやる」に尽きる。「仕事の時は仕事。子どものことで譲れない時はそれを精いっぱいやる」。建物を安全にする仕事に関わり続けたい-。高専生のころの初心を思い出せばまだまだ頑張れそうだ。
(住宅整備課課長代理建築担当、おおた・あやこ)
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