2020年12月14日月曜日

【回転窓】接客業の矜持とは

 南東北地方の山奥にある温泉駅に忘れてきてしまった手帳を売店の女性が送ってくださった。取材先のメールアドレスを書き留めており、電話口で読み上げてもらうなど大変な迷惑をお掛けした▼「お礼なんて結構ですよ。またいらしてください」。伺うのも、招くのも慎重にならざるを得ない時勢。思いがけない親切な言葉と善意にとても温かい気持ちになった▼駅近くに刀で鬼を退治する大人気漫画・アニメのファンがいわゆる聖地の一つに挙げる老舗の宿がある。吹き抜けのロビーの一部が、最終決戦にも登場するシーンを連想させてくれるのだと聞いた▼人気にどうあやかっているのか尋ねると、「これからもアピールはしません」と支配人。よもやの回答に驚いた。四季の絶景や上質なサービスが好評で常連客も多い。「おもてなしの中で『すてきな建築ですね』と評価していただければありがたい」。いっときの流行に乗らない姿勢に接客業の矜持(きょうじ)を感じた▼GoToトラベルの在り方が問われている。中止と継続、立場によってどちらも誤った判断になってしまう。感染症の収束を願わずにいられない。

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