大林組は水産物の安定供給を実現する養殖技術として、アワビに特化した「循環式陸上養殖技術」を開発した。フンや残餌によって飼育水に蓄積した有機物や窒素化合物を微生物の力で分解、除去し清浄な水質を維持。海水を浄化しながら再利用することで排水による海への環境負荷も減らす。漁獲量低下で養殖の期待が大きい地域の活性化にも貢献する考えで、年間10万個程度の出荷を目指す。将来的には中間育成の事業化も視野に入れる。
養殖に必要な水質環境を保つためばっ気・水流攪拌(かくはん)装置や電解装置、固形物ろ過装置、脱窒装置、生物ろ過槽などを使用する。微生物を使って飼育水内の有機物や窒素化合物を分解、除去する浄化技術に加え、適切な水質測定に基づくミネラル補給や清掃などの調整ノウハウも確立。天然アワビよりも成長を早めることができる。
ろ過した海水を常時供給する従来のかけ流し方式では1時間に1~2回の水交換が必要。開発した技術では飼育水に人工海水を利用するため、新たな水の供給は1日に水槽の2%程度で済む。
同じサイズのかけ流し方式に比べ、給排水量を1200~2400分の1に抑えられる。清浄な水質を保ちながら屋内で飼育ができ、悪天候や海の水質汚濁といった環境変化にも左右されない。
清浄な海水を好むアワビは水質など成育環境の適切な管理が求められる。水域環境の保全技術などを多数保有する大林組は、技術研究所(東京都清瀬市)で1年間の実証実験を実施。適切な温度管理や水槽の衛生管理手法を使って飼育した結果、殻長が3~4センチの稚貝を約1年で平均7センチ程度、最大8・5センチに成長させることに成功した。
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