2021年5月10日月曜日

【駆け出しのころ】テクノ菱和取締役常務執行役員管理本部長・加藤雅也氏

  ◇深めた信頼関係が財産に◇

 大学時代の研究室の同期は就職先として公務員やゼネコンが多く、設備会社に入ったのは私だけでした。最初の勤務地は地元の名古屋支店。配属先の設計部では先輩の指導を受けながらも、最初から小さな物件を任されました。当時はコンピューターはなく、電卓と手計算で負荷計算から始まり、設計図まで描き上げます。

 2年目にスケートリンクの現場に導入するガスエンジン冷凍機の熱源システムの設計に携わったのが、設備技術者として最初の大きな学びとなりました。元請のゼネコンの設備担当者にもよく面倒を見ていただき、課せられた宿題に必死で取り組んだことで、技術的な力がずいぶん付いたと思います。

 設計畑を中心に回りながら、工事現場も計5~6年ほど担当しました。2現場目の動物飼育舎の2期工事でのバイオクリーンルームも勉強になりました。隣の施設には既に動物が入れられており、2期工事での薫蒸による殺菌工程で動物に害が及ばないよう、安全対策で大変苦労しました。

 入社8年目ごろの液晶工場の新築工事は設計と現場の両方を担当。工期が厳しく、体力的にもきつかったですが、チーム一丸で乗り切りました。生産装置直結のプロセス設備のほか、工業用クリーンルームにも携わり、設備技術者として大きな財産となりました。

 担当した現場でお世話になった先輩技術者によく言われた「A(当たり前のことを)B(ぼんやりせず)C(ちゃんとやる)」。何かに対応する際にはABCを常に頭にとどめ、品質だけでなく、安全管理も含めて、自分の目で見て確認するよう諭されました。

 設計はまっさらな紙に、自分の考えを具現化するのが面白みの一つ。現場は図面を基に実際に形づくる達成感があり、それぞれやりがいがあります。新しいことを一つずつ吸収しながら、技術力を高めたいと常に考えてきました。設計でも現場でも経験から得たものが技術者としての自信につながります。

 社内、現場、顧客などでの人間関係は何より大切なもの。一緒に仕事をする上でいかに信頼してもらうか。コミュニケーションを図り、一つ一つの業務で成果を出しながら信頼関係を深める。これまで築き上げてきた人間関係も大きな財産です。

 デジタル社会の進展により、コンピューターなどで答えが一瞬で出てくる時代だからこそ、若い人たちには特にコミュニケーションを大切にしてほしい。自分の考えをきちんと言葉にして伝え、相手の言葉も正しく理解する。高度な技術を理解すること以上に不可欠な能力です。

 技術者として一本立ちするには、失敗も肥やしとなります。失敗することは、若いからこそ許されるもの。失敗を恐れずに新しいことにチャレンジし、成長してもらいたい。

入社9年目、チーム一丸で取り組んだ液晶工場の現場事務所で

 (かとう・まさや)1982年琉球大学理工学部卒、テクノ菱和入社。名古屋支店長、管理本部長(現任)などを経て2021年4月から現職。愛知県出身、61歳。

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