2021年5月13日木曜日

【若手の発案、国交大臣賞に】茨城県守谷市、壁面緑化でホップ栽培、地ビールを醸造・販売

  茨城県守谷市がグリーンインフラの取り組みに力を入れている。壁面緑化で育てたホップを原料に地ビールを醸造。市内の酒店などで販売して売り上げの一部を寄付してもらう。この手法が高く評価され、国土交通省の第1回グリーンインフラ大賞で「国交大臣賞」を受賞した。市は遊水地の活用など第2弾も検討している。

 壁面緑化に使っているホップはアサ科のつる性多年草。雌しべに含まれるルプリンはビールの苦みや香りに欠かせない。ホップで壁面を緑化するというアイデアは、2018年に始まった若手職員によるグリーンインフラの検討会で生まれた。市内には大手ビール会社の工場がある。海外の姉妹都市にもビールの名産地があることで、ホップの採用という案が挙がった。はじめは単なる壁面緑化だけを考えていた。だが「せっかく育てるなら」と、ビール造りにもチャレンジすることにした。醸造やホップ以外の原料調達は、市と包括連携協定を結ぶ企業に依頼した。

 プランターを使って市役所南側のガラス壁面で30株程度から育て始めた。株分けにより今では百数十株に増え、市内の中学校や子育て支援センター、商業施設などでも育てている。昨年は330ミリリットル缶で約2万本分に相当する4~5キロが収穫できた。販売範囲を市内だけでなく周辺自治体のスーパーなどにも拡大。売り上げも好調で昨年の製造分は既にほぼ完売状態という。

 地ビールづくりの取り組みは市の予算をほとんど使っていない。ビール缶1本につき40円を市に寄付してもらい、次年の肥料代や消耗品代に充てている。

 市はほかにも、グリーンインフラの一環として、スマートフォン向けアプリを使った「生き物調査隊」や市内のNPOと連携した「野鳥の道」などを実施。親子連れや自然愛好家に喜ばれている。取り組みが軌道に乗ってきたことで市は次の手を検討し始めた。

 その一つが利根川遊水地の有効活用だ。遊水地を管理する関東地方整備局から約15ヘクタールの遊休地を借り受け、グランピングやバーベキューも楽しめるスポーツ広場の整備を計画している。周辺では常磐自動車道のスマートIC整備が計画されており、市内外から集客が見込める。市の担当者は「常磐道から見え市の玄関口となる場所。通った人が立ち寄ってみたいと思えるような仕掛けを考えたい」と話す。

 市の特徴は「つくばエクスプレス(TX)」で都心に直結アクセスできる利便性の良さと緑豊かな自然。働く世代にとって住み良い環境をアピールし定住人口を増やすため、これからもグリーンインフラの取り組みに力を注ぐ。

0 コメント :

コメントを投稿