資材価格高騰に対応した請負金額の変更が難しい民間工事の現状に対し、国土交通省が関連法令を踏まえた見解をまとめた。実際の契約書に価格変動を理由とする請負金額変更や受発注者協議を認めないと記載していても、「明示的に協議しない場合」などには「優越的地位の乱用として問題になる恐れがある」と公正取引委員会の判断を引用して説明。民間工事の標準請負契約約款の一部規定が発注者の意向で削除・修正されている実態にくぎを刺した格好だ。
26日に開いた有識者会議「持続可能な建設業に向けた環境整備検討会」の第4回会合で説明した。先月の第2、3回会合で行った受発注者ヒアリングを踏まえ、価格変動に対応した民間工事契約の方向性や課題を改めて整理し委員らに意見を求めた。
国交省は大手建設会社への調査で、標準約款を修正した契約書が多用されている実態を確認。例えば「物価高騰による請負代金の変更は認めない」と明記したり、契約変更を認める場合も「不可抗力により特段の事情がある場合」と限定したりしていた。しかし公取委の判断によると、いかなる場合も「独占禁止法における禁止規定に違反することは許容されない」。優越的地位の乱用に該当し得るケースとして受注者との協議に応じない場合や、価格転嫁しない理由を書面やメールで回答しない場合を挙げている。
建設業法の規定に関連し、国交省は「不当に低い請負代金の禁止」の課題も指摘。違反した発注者への「勧告」対象から民間事業者が除外されており、勧告を行うための報告・資料の提出請求権を許可行政庁が持たない現状に触れた。
公平・平等な立場での契約締結を制度的に担保する目的から、特別な理由がなければ標準約款を利用するのが「妥当」との認識も改めて表明。想定外のリスクをすべて請負側の負担とすることは公平性に反するだけでなく「いたずらに契約の投機性を惹起(じゃっき)する」との考えから、契約時に価格変動や請負金額変更に関する事項を書面交付しなければならないとの規定の重要性も指摘した。
工期や請負金額に影響を及ぼす事象に関する情報提供義務が、発注者と異なり受注者に課されていないことにも言及。2016年7月策定の「民間工事指針」などを踏まえ、あらかじめ責任分担や協議ルールを明確化するなど想定外のリスク対応を受発注者間で確認する必要があるとの認識を示した。
source https://www.decn.co.jp/?p=147304
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