東京・中野区は9日、建築家の後藤慶二(1883~1919年)が設計した「旧中野刑務所正門」の保存策として、建物を解体せずに移築する曳き家を採用する方針を固めた。同じ敷地内に建設を予定している小学校の教育環境の確保と、正門の保存・公開の両立を重視した。
区は9日の区議会区民委員会と子ども文教委員会に正門の取り扱い方針案を報告した。正門を現地から西側約100メートルにずらす計画で、工事にかかる概算経費は約4億9600万円と試算した。区議会で予算が議決されれば、2021年度から基本計画策定、22年度から設計に入る。移転工事は24年度から約2年半を想定している。
正門はれんが造りで、大正期のモダニズム建築の代表作として知られる。国有地の旧矯正管区用地(新井3の45の1)の敷地内にある。敷地は区が国から取得し、区立平和の森小学校の移転先として活用する予定。学校整備に当たっては、正門の保存を望む声が多く寄せられていた。
正門の保存を巡っては、昨年1月に区が現地保存する方針を決定。その後、幅広い保存方法を検討すべきだという意見があり、区が学術調査を行った。曳き家が技術的に可能であることが判明。正門の文化財的価値を重視する現地での保存か、移転し学校の建設用地を確保する曳き家の2択で再検討していた。
正門の曳き家による保存が決定した場合、平和の森小の新校舎は来年度に基本計画を策定する。22、23年度に設計をまとめ正門の移転工事完了後に着工する。供用開始は当初計画から約4年遅れの27年度になる見通しだ。
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