2020年11月9日月曜日

【駆け出しのころ】東急建設執行役員建築事業本部原価企画統括部長・寺嶋浩氏

  ◇顧客起点で信頼深める◇

 デスクワークよりも現場でのものづくりが自分に向いているだろうと思いました。東急建設に入社後、初めて配属されたのは千葉県船橋市のマンション現場。発注者や設計事務所、職人など、いろんな人たちと関わり合う面白い仕事だと感じました。

 先輩たちに恵まれ、酒の席でも教科書には載っていない仕事のことを学びました。現場では作業の節目に焼き肉パーティーなどのイベントを開き、職人さんとのコミュニケーションは良好。職人の気持ちを理解していないと、作業が円滑に進まないことを教えてもらいました。

 所長になるまで現場勤務を志望していましたが、30代に転機を迎えて東京支店の積算部門に異動。次代を担う積算担当の確保・育成で、私に白羽の矢が立ちます。何回か打診を断りましたが、最後は受け入れることになりました。

 そうしたやりとりを経て担当した積算業務でしたが、見事にはまります。受発注者双方にとってより良いプロジェクトを「われわれ(積算部門)がコストを通じてつくり上げていく」と先輩から諭されました。事業全体に関わる積算のすごさを感じたのを覚えています。

 積算関連のシステム構築などに取り組む中で積算を深く学び、その魅力に気付かされます。数字を扱っていろいろなものを作り上げるのが楽しく、自分が積算に向いている人間だということが分かりました。

 現場以上に業務の時間配分が厳しく、毎日時間に追われ、緊張の日々が続きました。年単位のスパンの現場では調整に比較的余裕がありますが、積算はさまざまなやりとりで予定に隙間がありません。余裕を持たせながら、ぎりぎりの中で工程を組み立てることの大切さを学びました。

 発注者の事業自体を成功させるためにどう取り組むか。コストエンジニアという立場でコストをプランニングしながら、事業を成功させることで相手との信頼関係が深まります。

 当社単独での超高層ビルの初施工案件では、一般的な工種別ではなく、部屋別・エリア別といった切り口でコストの内訳を明示するよう要請されました。時間厳守の中、寝る間を惜しんで両方の切り口の見積書を出せる専用システムを構築。発注者側の意向に沿った見積もりを作るという積算担当の責務を果たせました。

 人間同士、意見がかみ合わないこともありますが、自社ではなく顧客起点で説明責任を果たすことが重要です。コストが増える理由だけでなく、どのようにすればコストが抑えられるのかも含めたやりとりを通じて、相手との信頼関係を深める。若い人たちにも顧客との信頼関係を築きながら、仕事の面白さを感じてもらえればと思います。

入社1年目、初めて施工図を書いた現場事務所での一枚

 (てらしま・ひろし)1986年明治大学工学部建築学科卒、東急建設入社。建築本部プロジェクト推進部長、建築事業本部原価企画統括部長(現任)などを経て2019年4月から現職。石川県出身、57歳。

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