2020年11月17日火曜日

【記者手帖】「バズる」だけでなく

  記者をしていて初めて「バズる」という経験をした。ある建物が取り壊されることを記事に書いた。後で知ったが、そこはサブカルチャーの「聖地」だったようだ。ツイッターはすごい。聖地の解体にショックを受け、別れを惜しむ人たちによって記事が瞬く間に拡散された。多くは普段、建設専門紙を読まないはずだ。全くの想定外。だが正直に言おう。記事を書いた本人としては、まんざらでもない◆いけない、いけない。はたとわれに返る。記事が衆目を集めるのは確かにうれしいが、それだけでいいとは思えない。本当はたった一人でもいい。記事を必要としている人に届いてほしい。見えない読者を頭に浮かべながら記事を書いている◆ある日、仕事とは別の場で偶然、一人の職人さんに出会った。建設専門紙の記者だと伝えると、心に残っている記事の話をしてくれた。驚いている私を見て、彼は叫んだ。「あの記事を書いたのは君だったのか!」◆その時を思い出し、ほくそ笑んでいることも正直に言おう。自慢話のようで恥ずかしい。だが、こんな経験がもっとできるよう今日も頑張るのだ。(ぬ)

0 コメント :

コメントを投稿