2020年11月9日月曜日

【回転窓】美しい風景の復旧を

  風の台風15号に続き大雨の台風19号に見舞われた昨年と打って変わり、今年は7~10月の台風シーズンに台風の上陸が一つもなかった。だが7月豪雨が全国各地に爪痕を残した▼早期の復旧・復興とともに事前の防災対策の重要性がますます高まっている。災害に備え機能を強化しつつ、自然と調和するよう風景も整える、そんな災害復旧事業が戦後すぐに実現している▼1945年9月の枕崎台風で被災した「史跡名勝厳島」(広島県廿日市市)の復旧工事は通常の砂防工事ではなく、史跡にふさわしい姿での復旧が求められた。砂防と庭園の専門家が協働し土石流で堆積した巨石を巧みに利用しながら、紅葉の名所として知られる紅葉谷公園の風景や厳島の歴史的風致との調和を図った▼庭園砂防と称される日本庭園風の美しい砂防施設は自然の景色に溶け込む。戦後の混乱期にさまざまな人の尽力により復旧整備され、今に至るまで宮島を守り続ける▼庭園砂防施設の歴史的価値や意匠性が評価され戦後土木施設で初めて重要文化財(重文)に指定される。ふるさとの風景の復旧・復興を後押しするきっかけになってほしい。

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