2020年11月18日水曜日

【回転窓】柿の木もたぬ家もなし

 実家が空き家になって3年近くたつ。今年はコロナ禍で帰省ができず、どうなっているのか心配だったが、先日出張帰りにこっそりと立ち寄った▼庭は雑草で覆われ、家の壁にはツタがはっていた。半日かけて草を刈り、伸びた枝を切る。最後に除草剤をまいたが効果はいつまで続くものやら。主を失った家は荒れる一方だが、庭先の柿の木だけは何もなかったように多くの実を付けていた▼柿は日本発祥の果物とされるが、今では世界中にある。英語でもフランス語でも「カキ」と呼ばれ、その種類は1000を超す。ただし、そのまま食べられるのは甘柿の「富有」や「伊豆」「じょうもん」など数種類だけ▼渋柿は干して乾燥させたり、湯に浸したりすると渋が抜けておいしく食べられる。手間を掛ければ、どんなものでもおいしくなるという見本のようだ▼「里ふりて/柿の木もたぬ/家もなし」(松尾芭蕉)。昔は多くの農家が庭に柿の木を植えていた。桃栗三年柿八年というが、柿の木は生育が遅いため、実がなるには時間がかかる。空き家になった実家で両親が育てた柿を食べながら、時の流れに思いをはせてみた。

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