2020年11月17日火曜日

【回転窓】やれば、できる

  素粒子ニュートリノの観測に成功し、2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊東京大学特別栄誉教授が12日に94歳で亡くなった▼理論的に存在が予測されていたが、誰も観測できずにいた謎の物質ニュートリノ。小柴さんが東大助教授に就いたのが1958年。70年に教授になったというから、長きにわたって研究に打ち込み世紀の発見にこぎ着けた▼超新星爆発で生じたニュートリノの観測を支えたのが岐阜県飛騨市の神岡鉱山地下に設けた巨大観測装置「カミオカンデ」。3000トンもの水が蓄えられた円筒状の装置はもともと陽子崩壊を観測するためのものだった▼あらゆる物質を通り抜けるニュートリノが水の分子と衝突した時にごくまれに発生する光を捉える。カミオカンデで観測を開始したのは87年1月。翌月にニュートリノの観測に成功した。定年退官する1カ月前だったそうだ▼今週月曜日、本紙の4面にハイパーカミオカンデの整備に向けた関連業務の発注記事が載っていた。3代目の観測装置。小柴さんが残した言葉「やれば、できる」はきっと、意思を継いだ研究者らの心に響き続けるのだろう。

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