2018年12月12日水曜日

【回転窓】夕日と文学気まま旅

冬型の気圧配置が強まり、ここ数日は全国各地で真冬並みの寒さとなっている。つい身を縮めてしまいがちだが、寒い季節ゆえの恩恵もある▼天候に恵まれた日は空気が澄み、夏とは違う夕日の美しさを見られるのも一つ。中でも日本海の夕日は美しく、夕方の早い時間から空と海が赤く染まり始める▼日本古典文学の研究者である浅見和彦成蹊大名誉教授が本紙連載で書いている。「日本海の夕景のすごいところは西から東、左から右、何一つとして目を遮るものがなく、空、海、夕照の百八十度の壮大な風景を一望できることだろう」(2010年2月4日付『文学気まま旅』19話)▼歌人の与謝野晶子は新潟・直江津の落日の光景に何を見て取ったのか。直江津の浦にどのような悲しい物語があり、今も海に向かい立っている供養塔とは…。いずれも浅見氏の連載19話に詳しい▼08年8月から15年8月まで連載した計55回の『文学気まま旅』が一冊にまとまり、三省堂から『日本文学気まま旅』のタイトルで出版された。47都道府県をあまさず巡る旅のガイドで、文学作品とともに「その先の小さな名所へ」といざなってくれる。

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