海岸沿いの険しい崖に張り付くように整備された静岡県道416号静岡焼津線。車で通っていた時、道沿いに数百メートルにわたって古いコンクリート製の構造物が目に付いた。土砂に埋もれて一部は圧壊。草木も生い茂り、放棄されてから長いのだろうと思った◆帰宅後調べてみると「石部洞門」という名称だった。1940年代から段階的に整備された洞門は、71年7月に起こった斜面の大崩壊で一部が押しつぶされたという。道路を走っていた乗用車が不幸にも巻き込まれ1人が命を落としたそうだ◆災害後に建設省(現国土交通省)と県は復旧工法を協議。洞門では土砂崩れによる圧壊の危険が避けられないと判断し、崖を迂回(うかい)する海上橋の建設を決めた。着工は71年10月。わずか9カ月後の72年7月に延長360mの海上橋が完成した◆地震や水害、崖崩れ。日本は古くから自然災害と向き合ってきた。発生のたびに人々の暮らしを脅かし、少なくない数の命が奪われていく。そして土木技術は安全で安心できる社会づくりに貢献してきたのだろう。古い洞門を目にして土木の役割は何か、その一端を垣間見た気がする。(紀)
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