朝晩の冷え込みが厳しくなり、冬物への衣替えを進めている方も多かろう。自宅から見える富士山も雪化粧が裾野の方へと徐々に広がり、冬支度が進んでいるかのようだ▼日本人にとって特別な山である富士を国内外に広く知らしめたものとして、浮世絵の「富嶽三十六景」が挙げられるだろう。江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎の代表作。19世紀に起こったジャポニスム(日本趣味)などにより、海外にも作品が知れ渡った▼色鮮やかに、巧みな描写・構図で表現された富士山は見飽きることがなく、多くの人々を魅了する。単なる風景画の域を超え、日本人の心の原風景を描き出しているようだ▼今夏に増改修工事が完了した日本武道館で、先月下旬から建物のライトアップが始まった。テーマは「満月の清らかな光が降り注ぐ霊峰・富士」。流線形の屋根と建物の頂点にある巨大な擬宝珠(ぎぼし)に黄色や白色のLED投光器を設置。月明かりに照らされた富士山を表現した▼照明デザインを担当した石井幹子さんは、「多くの人が優しい気持ちになってほしい」との思いを込めたという。澄んだ夜空に希望の光を照らしてほしい。
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