目には見えない仕事にも会社は支えられている |
◇仲間たちを支える会社の「花形」◇
「地元に貢献できる仕事がしたい」。北濱昭広さん(仮名)は、強い思いを持って地元の大手電力会社に入社した。会社の「花形」と考えていた発電所での仕事に就くことを夢見ていたが、実際に配属されたのは思いもしなかったシステム開発の部署だった。戸惑い気持ちが揺らぎながらも現在は「会社で重要な役割を担っている」誇りを胸に、日々仕事と向き合っている。
高校卒業まで過ごした地元を離れ、自宅から遠く離れた国立大学に進学した。地元と距離を置いたことで「地元愛が一層強まった」。故郷に貢献できる仕事はないか。たどり着いた答えが電力会社。生活に欠かせない電力を届ける仕事に就こうと考えた。
入社時に漠然とイメージしていたのは、発電所の維持管理といった業務に携わる自分の姿。だが配属されたのはグループが使用するシステム開発の部署だった。同期と離れ離れになったこともあり、「不安な気持ちでいっぱい」だった。
グループで使うシステムの開発のため「基本的に外に成果が出てこない」。配属直後は「何が楽しいんだ」とふてくされ、入社時に抱いていた思いとのギャップに苦しんだ。いっそのこと辞めてしまおうか…。葛藤する日々が続いた。
考えが変わったきっかけは営業職に就いた同期の言葉だった。「システムの使い心地が良い」という言葉に続いたのは「さすが精鋭集団だな」の一言。今考えると「冗談半分だったかもしれない」。それでも「大げさかもしれないが自分は選ばれし者」と、自身の仕事をポジティブに捉えることができた。
直接的に日の目を見ることは少ないのかもしれない。けれどもグループで働く数千人の社員が、開発に携わったシステムを使って仕事をしている。「地域に貢献する仲間たちを支えている」という思いが芽生え、仕事に対する迷いはなくなった。
考えが変わってから不安はなくなり、仕事も順調に回り出した。任せてもらう案件が増えスキルを磨く勉強も始めた。「気の持ちようでここまで変わるとは」と驚いた。
キャリアを重ね今は後輩を育てる立場になった。中には、かつての自分と似たような気持ちを抱く後輩もいる。自分のような気持ちの変化が訪れるかは分からない。「さまざまな業務で会社が成り立っているということを分かってほしい」と願いつつ、日々接している。
総合職で採用され3年がたった。「そろそろあるぞ」と先輩が異動の可能性をほのめかす。入社時に描いていた維持管理や海外プロジェクトなど、興味がある部署はたくさんあるが「それぞれの部署のやりがいがある」。これから先どうなるか分からない。だからこそ担当している仕事と真剣に向き合い、「本当の花形」と思うことが大切なのだと感じている。
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