2020年10月9日金曜日

【未来のための超高層建築】東京・常盤橋プロジェクト、「トーチタワー」2027年度誕生へ

広場との立体的な空間を生む空中散歩道(ⓒ三菱地所設計)

  三菱地所が東京・常盤橋エリアに計画する「Torch Tower(トーチタワー)」。日本一の高さ約390メートルを誇る超高層ビルが2027年度誕生する。設計を手掛ける三菱地所設計(東京都千代田区、林総一郎社長)の松田貢治常盤橋プロジェクト室長は「常盤橋の価値を継承しながら、この場所に行きたいと思われるデザインにしたい」と力を込める。

 ビルのデザインの検討に当たっては三菱地所設計と、福岡孝則(Fd Landscape主宰)、永山祐子(永山祐子建築設計主宰)、藤本壮介(藤本壮介建築設計事務所主宰)の3氏がチームを組成した。福岡氏が広場、永山氏は低層部、藤本氏が頂部のデザインを担当する。

 トーチタワーと建設中のオフィスビル「常盤橋タワー」の間には、約7000平方メートルの広場を設ける。コンセプトは「公園のような、劇場のような、都市に開かれた大型広場」(松田室長)。日常のにぎわいの場として利用するとともに、大型ビジョンなどを備え災害時にも活用できる。

 福岡氏は「(コロナ禍などが取り巻く)こんな時代だからこそ、オープンスペースから住みやすい都市づくりに大きな可能性を感じている」と広場の重要性を強調。「都市と自然が人と交わって新しい価値を作り出す場所にしたい」と説明する。

 広場はトーチタワーの地上1~8階を結ぶ、延長約2キロの歩行空間「空中散歩道」や、日本橋川沿いの景色を望む約2500平方メートルの屋上庭園とつながる。地上から上空へと向かう自然に囲まれた動線は「日々風景が変化し、何度でも訪れたくなる」(福岡氏)。永山氏も「都市とアクティブにつながる、新しい体験を生み出す場所になる」と自信をみせる。

 ビル高層部の形状は、ホテルや展望施設といった機能をイメージ。夜はライトアップされ、東京の街を照らす。57階のホテルロビーにつながる「天空の丘」は、上部が吹き抜けのスペースで、300メートル超の高さからの壮大な眺望を風や自然を感じながら楽しめる。「東京の真ん中に浮かび上がる空中都市のよう。丘に腰掛けて、人々が出会い時間を過ごす空間となる」と、藤本氏は語る。

 地上と低層、高層で人が集う憩いの空間が重なり合う。それぞれの場所での人々のアクティビティーが連なり、「これからの時代を担う立体的な都市像」(藤本氏)を映し出す。

上部吹き抜けの天空の丘(ⓒ三菱地所設計)

 「文化や豊かな環境を伝える思いを、チームで共有している」と話す松田室長。常盤橋にはかつて、江戸城へ向かう表玄関だった「常盤橋御門」があった。1960年代に入り多くのオフィスビルが集積。エリア開発のコンセプト「日本を明るく、元気にする」存在として、経済成長を支えてきた。一方で常盤橋公園や日本橋川など、周辺には自然も残る。

 常盤橋が担ってきたシンボル性と、広場などの豊かな自然を兼ね備えたトーチタワー。人々のアクティビティー創出も融合させることで、「未来の人々のための超高層建築」(松田室長)の在り方に挑む。

 トーチタワーは、三菱地所が再開発を進める複合街区「TOKYO TORCH(トウキョウトーチ)」の中核を担う。建物規模は地下4階地上63階建て延べ54万4000平方メートルとなる。

トーチタワー(中央)の完成イメージ(ⓒ三菱地所設計)

 総貸室面積21万3000平方メートルのオフィスを中心に、店舗、MICE(国際的なイベント)に対応する約2000席のホール、約100室の国際級ホテルなどを配置する計画だ。着工は2023年度を予定する。施工者は決まっていない。

 三菱地所の吉田淳一社長は「日本一の高さのシンボル性とともに、名前を親しんでもらいたい」と期待する。「トーチ」が意味するたいまつのように、常盤橋に希望の明かりがともる。

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