東京都は、新施設への機能更新を計画している葛西臨海水族園(江戸川区)の既存施設の利活用に向けた検討に入る。14日に公表した「葛西臨海水族園の更新に向けた事業計画」に「新施設整備の取り組みと並行して(既存施設の)利活用の可能性とその採算性などについて検討」すると明記した。
具体的な検討方法は未定で、有識者などによる会議体を設置するかどうかも固まっていない。所管部署の都建設局公園緑地部計画課は「本年度から検討への準備はしていきたい」としている。
事業計画の策定を受け新施設整備への事業化手続きが本格化する。新施設は既存施設の隣接地に建設し、完成後に水族園機能をすべて移す。事業計画では新施設の展示の狙いや施設規模、事業手法を定めた。施設整備にはBTO(建設・移管・運営)方式のPFIを採用する方針。2021年度までをPFI法に基づく実施方針策定や事業者選定などに充てる。22年度以降に設計や工事を行い、26年度の開園を目指す。
都はこれまで既存施設の後利用について、機能移設後に施設状態などを調査しなければ検討できないと説明してきた。昨年度まで運営した有識者会議「葛西臨海水族園事業計画検討会」でも議論の俎上(そじょう)に載せることはなかった。同検討会が3月にまとめた報告書で「既存施設の利活用の関する検討会の設置」を提言したことを受け、既存施設への向き合い方を若干軌道修正した格好だ。
報告書では「新施設の設計・施工・運営など各段階でクオリティーをチェックするアドバイザリーボードの設置」も提言された。事業計画ではPFI事業実施の留意点として、新たな水族園像を要求水準書に的確に表現した上で、各段階で要求水準を満たすよう「水族館・博物館、環境教育、建築、設備、官民連携、経営などの専門家から助言を得ながら監理監督する」と書き込んだ。質の高い事業者を選定するための選定方法も検討課題に挙げた。
建築家の谷口吉生氏が設計した既存施設は1989年に竣工。マグロが遊泳する全周90メートル程度のドーナツ型水槽など画期的な展示方法と、意匠や景観を兼ね備えた建築作品として評価が高い。日本建築学会や日本建築家協会(JIA)が保存・活用を求める要望書を出している。
新施設は延べ2万2500平方メートル程度の規模を想定。既存施設に比べ学習・体験やバリアフリーのためのスペースを広げ、主要設備の交換や点検のメンテナンス性能も高める。類似水族館の実績や見積もりから施設整備費は約244億~276億円と試算している。
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